研究課題/領域番号 |
21K16084
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 秀樹 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (90794389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 再生医療 / iPS細胞由来心筋細胞 / 細胞移植 / 直接注射 / カテーテル |
研究開始時の研究の概要 |
近年,重症の心不全症例に対して,多能性幹細胞を由来とする心筋細胞の移植による心筋再生治療の有効性が示されているが,移植方法の違いによる有効性や安全性の評価の比較については十分行われておらず,最適な移植方法の開発が求められている。 そこで本研究では,心筋梗塞モデルのカニクイザルの心臓へ,直接注射法および冠動脈内投与法による心筋細胞移植を行い,移植方法の違いによるグラフトの生着や心機能改善効果,移植後不整脈の発生について検証する。
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研究実績の概要 |
幹細胞由来心筋細胞の心臓への移植方法として,直接注射法ならびに冠動脈内投与法の有効性および安全性の差異を比較するために,さらに動物数を追加して実験を行った。移植に用いるヒトiPS細胞由来心筋細胞を追加で作製するとともに,カニクイザル急性心筋梗塞モデルを合計4頭作製した。 直接注射法では合計2頭の動物に細胞移植を行い,移植後の心機能や不整脈の発現を観察した。細胞移植により心エコー図検査や造影CT検査で評価した移植後の心機能は改善を認めた。ホルター心電図検査では,移植後2週目をピークとする心室性不整脈の発生を認めたが既報の研究結果に比べてその数は少なく,持続時間も短かった。病理組織学的検索では,ホストであるカニクイザルの梗塞心筋領域にグラフトの生着を認めた。 冠動脈内投与法では,投与する細胞数や細胞塊のサイズを変え,冠動脈左前下行枝内にカテーテル用いて細胞を注入することで移植を行った。合計2頭の動物に細胞移植を行い,1ヵ月後に再度造影検査を行った。うち1頭は細胞注入中に死亡した。冠動脈造影検査では冠動脈の閉塞や狭窄所見を認めなかったが,左室造影では左前下行枝領域の壁運動低下を認めた。組織検査では細胞数が多く,より大きいサイズの細胞塊を投与した動物において,ホストの心筋内細動脈の周囲にグラフトの生着を認めたものの,同時に心筋梗塞の形成も認めた。移植後の心機能はこれまで移植を行ったいずれの個体においても改善は認められず,移植により大きな心筋梗塞が形成された動物では,慢性期の心収縮能低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに試験を継続することができ,合計10頭の動物(直接注射法4頭、冠動脈内投与法6頭)に対して細胞移植を行うことができたため,研究は概ね順調に進展していると考えている。冠動脈内投与法では,ホストの心筋の細動脈周囲にグラフト生着を認めたものの,同時に心筋梗塞の形成も認め,移植後の心機能の改善効果も乏しかった。以上より,幹細胞由来心筋細胞の移植方法として,冠動脈内投与法は非効率的なアプローチであると考えられた。今後は,直接注射法の有用性を検証するために,さらに動物数を追加しての実験が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,幹細胞由来心筋細胞の移植方法としての直接注射法の有用性を検証するために,さらに動物数を追加しての実験が必要であると考えている。動物数を追加して実験を行うことにより,手技の安全性を確認するとともに,移植後のグラフト生着の程度や心機能改善効果,移植後不整脈の発生頻度などを評価していく。また,生着したグラフトの病理組織学的評価も併せて行っていく。
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