研究課題/領域番号 |
21K16085
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平岩 宏章 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10844904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 心不全 / 心脾連関 / 脾臓容積 / 心拍出量 / 交感神経活性 / ヘモグロビン / マクロファージ / 髄外造血 / 脾臓容積指数 / 血中ヘモグロビン / 運動耐容能 / 組織マクロファージ |
研究開始時の研究の概要 |
心不全は未だ致死的な疾患の一つであり、個別化医療を含めた新規治療法の開発の社会的ニーズは非常に高い。 近年、心不全において心臓と他臓器の連関が注目されているが、脾臓との連関(心脾連関)については未解明の部分が多い。一方、脾臓には様々な役割があるが、組織マクロファージを介した心脾連関に注目した先行研究はない。また、心不全における脾臓の生理学的な役割も十分解明されていない。 本研究は、心不全における多臓器連関の中での脾臓の機能多様性や、病態との関連を明らかにし、さらには、心不全における新たなバイオマーカやモニタリングの開発や、心脾連関への介入を念頭においた新規の心不全治療法の開発を目指した研究である。
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研究実績の概要 |
本研究は、心不全における脾臓の未解明の役割、特に多臓器連関の中での脾臓の機能多様性を探索し検証することを目的としている。これまでに研究代表者は、左室補助人工心臓(LVAD)を要する重症心不全で、脾臓容積は増大し、LVAD不良による心不全増悪に伴い脾臓容積は速やかに減少することを報告し、重症心不全において脾臓は有効循環血漿量を調節している可能性を示した。また、脾臓容積はLVAD装着患者のPulsatility Indexと関連し、自己心拍出量に寄与している可能性を示した。さらに、脾臓容積と運動耐容能の関連について共分散構造解析を用いて検討したところ、脾臓容積はLVAD装着患者の血中ヘモグロビンを介して、運動耐容能指標であるPeakVO2と関連することを示した。また、慢性心不全患者219人のデータを後ろ向きに解析し、脾臓容積と予後の関連について検討した。脾臓容積の中央値は118.0mLであり、脾臓容積指数(SVI)は心拍出量および一回心拍出量と正の相関を示し、全身血管抵抗とは負の相関を示した。さらに、低SVI群は高SVI群よりも、心イベントが多かった。ここまでのまとめとして、The cardiosplenic axis: the prognostic role of the spleen in heart failure と題したReview論文を報告した。さらに現在、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)における脾臓での髄外造血・免疫機能の意義に注目し研究を進めており、心臓、脾臓、骨髄の臓器連関について検証中である。Interplay of the heart, spleen, and bone marrow in heart failure: the role of splenic extramedullary hematopoiesisと題した論文を作成、投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、心不全患者における脾臓容積と血行動態、運動耐容能、予後との関係を、臨床データを用いて検討した。その結果、特に心不全においては神経体液性因子および交感神経活動の活性化に伴い、その大きさを変化させ、構造的リモデリングを生じ、有効循環血漿量を調節している可能性が示唆された。すなわち心脾連関において、マクロの視点から脾臓の役割の一部を明らかにした。さらには、文献的考察から、脾臓から動員される免疫細胞やマクロファージが、心筋組織へ影響を与えることを示し、脾臓の機能的リモデリングの側面と合わせて、心脾連関の全体の概要についてレビューを行った。さらには、心不全の中でも特に未だ治療の確立していない、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)における脾臓での髄外造血・免疫機能の意義に注目し、心臓、脾臓、骨髄の臓器連関について研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)に対する治療法の改善は、患者の予後と生活の質を改善するために極めて重要である。HFpEFは高齢者における主な心不全表現型であるが、有効な治療法がないために予後不良となることが多い。HFpEFでは、これまで脾臓と骨髄の役割に注目されることがほとんどなかった。しかしながら最近の研究では、脾臓と骨髄がHFpEFにおいて、特に炎症と免疫反応に関連して重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。骨髄は、心臓に移動して疾患の原因となる特定の免疫細胞の産生を増加させる可能性がある。脾臓は、心不全進行を抑制したり悪化させたりする免疫応答に寄与し、脾臓における髄外造血はHFpEFにおいて重要な役割を果たしている可能性がある。心不全では、脾臓における代謝活性の亢進、免疫細胞の産生と心臓への動員、それに伴うサイトカイン産生が起こる可能性がある。このことは、心臓における免疫細胞(マクロファージ)のアンバランスとともに、全身の慢性炎症につながり、慢性炎症と進行性の線維化をもたらし、心機能低下につながる可能性がある。骨髄と脾臓は鉄代謝の変化と貧血に関与しており、これもHFpEFの一因となっている。以上のように、HFpEFにおける心臓、脾臓、骨髄の相互作用の概念を、特に脾臓における髄外造血に焦点をあてて検証していく。最終的に、脾臓がHFpEFの新たな治療標的となりうるかどうかを検証していく。
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