研究課題/領域番号 |
21K16094
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
桂田 健一 自治医科大学, 医学部, 講師 (70598630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 交感神経 / SGLT2 / 心不全 / 肥満糖尿病 / 腎除神経 |
研究開始時の研究の概要 |
Sodium-glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は尿糖排泄を促進し、血糖を低下させる新規糖尿病治療薬であるが、心不全発症リスクも減少させることが近年報告された。そのメカニズムとして心不全に伴う交感神経活性化を抑制するためと想定されるが、詳細は不明である。本研究は、心不全ラットおよび心不全患者の血液検体を用いて、腎臓における交感神経活動とSGLT2発現・機能の連関を解明する。これを通じて、心不全の新規の成因解明と治療への応用に貢献する。
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研究実績の概要 |
冠動脈結紮による心不全モデルラットに対して外科的腎神経切断による腎除神経を施行し研究に用いた。心不全ラットでは正常ラットに比較して、(1)心重量および左室拡張末期圧が上昇し、左室±dP/dtが低下していた。(2)腎組織のノルエピネフリン含有量が増加していた。(3)安静時の全腎交感神経活動および求心性腎神経活動が亢進していた。(4)腎近位尿細管におけるSGLT2の発現が亢進しており、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン静脈内投与に対する反応(尿量、ナトリウム排泄量、グルコース排泄量)も亢進していた。(5)腎除神経により心不全群のSGLT2発現レベルおよびダパグリフロジンに対する反応は正常化した。ヒト胎児由来腎臓培養細胞を用いたIn vitro実験において、ノルエピネフリン刺激により細胞内から細胞膜へのSGLT2輸送が促進された。これらの結果から、SGLT2 と腎神経は双方向性の連関により体液調節に寄与しており、その機能破綻が心不全における体液貯留に結び付いていると考えられた。 引き続き、肥満糖尿病モデルであるOLETFラットおよび対照であるLETOラットを使用して研究を継続した。OLETFラットではLETOラットに比較して、有意に体重が増加するとともに、安静時の全交感神経活動および求心性腎神経活動が亢進していた。 本研究成果は、交感神経活性化を背景にもつ病態に対する、SGLT2阻害薬や腎デナベーションなどの自律神経修飾治療による介入への発展・応用基盤となる点において意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は主として心不全ラットに対するSGLT2阻害薬の急性反応、および腎除神経後の変化をみる研究計画を概ね遂行できた。しかし、病態モデルにおける腎炎症の評価およびSGLT2阻害薬の慢性効果の検証が行えていないため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は主としてSGLT2阻害薬の交感神経活動および腎炎症に対する慢性効果(8週間のSGLT2阻害薬の経口投与の効果)を検証する予定である。当該領域の研究では、病態モデルとして心不全に対するSGLT2阻害薬の報告が近年急速に増加しており、新規性の点で課題がある。そのため、病態モデルとして心不全モデルに引き続き使用している肥満糖尿病モデルによる検証を継続する。これまでに肥満糖尿病では求心性腎神経活動が亢進していることを見出しており、脳内機序を介した交感神経出力の増大が予想されるため、解析を進める。本研究成果はSGLT2阻害薬と他薬剤との併用効果や、腎除神経の治療効果検証の点で新規性が高く、肥満糖尿病における交感神経-SGLT2連関の解明およびSGLT2阻害薬の慢性効果の検証、腎除神経の効果検証は、心不全を含めた交感神経活性化病態への治療応用に貢献できる。 以降、基礎実験と併行して糖尿病合併および非合併心不全患者を対象とした、SGLT2阻害薬と炎症・交感神経バイオマーカーとの関連を検証する予定である。
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