研究課題/領域番号 |
21K16136
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 美奈子 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (70883601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ANGPTL4 / 肺線維症 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性進行性で予後不良な疾患である特発性肺線維症(IPF)の病態の解明は不十分であり、治療薬の開発が急務である。申請者は、IPFの病態に関与するmTOR経路の下流遺伝子としてANGPTL4を見出した。本研究では、IPFの機序と新規治療ターゲットの解明を目的として、ANGPTL4に着目した。遺伝子改変マウスや細胞株を用いてIPFの病態におけるANGPTL4の役割について解析するとともに、モデルマウスを用いてIPF治療における臨床応用の可能性についても検証する。本研究によって、これまで肺線維症の分野で語られることのなかったANGPTL4が新たな治療ターゲットとなる可能性が明らかになる。
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研究実績の概要 |
本研究はIPFの病態におけるANGPTL4の役割を解明し、ANGPTL4の肺線維症の治療ターゲットとしての可能性を検証することを目的としている。 IPF患者肺の免疫組織化学染色では、幼弱な線維芽細胞巣の化生上皮や線維芽細胞でANGPTL4の発現亢進を確認した。また、IPF急性増悪患者の血清ANGPTL4濃度は、IPF慢性期やコントロール群と比較してELISAで有意な上昇を認め、血清ANGPTL4濃度は肺線維症の病勢を反映している可能性が示唆された。 ANGPTL4の発現調節機序の解明については、A549細胞において、TGFβ刺激後にANGPTL4の有意な発現上昇を認め、さらにsiRNAを用いたSMAD4のノックダウンで有意にANGPTL4の発現低下を認めた。さらにSMAD4のノックダウンで抑制されたEMTは、ANGPTL4のリコンビナント蛋白の添加により回復を認め、ANGPTL4により促進されるEMTはTGFβ-SMAD4経路により調整される可能性が示唆された。さらに、線維芽細胞であるHFL-1にANGPTL4のリコンビナント蛋白を添加すると、遊走能および収縮能の有意な亢進を認めた。ANGPTL4は分泌蛋白であることから、肺線維症の病態の起点となる上皮傷害により肺上皮細胞で発現が上昇したANGPTL4がパラクライン作用により線維芽細胞の機能に影響を与える可能性が示唆された。 ANGPTL4ノックアウトマウス(ANGPTL4-KO)を用いたブレオマイシン刺激肺線維症モデルでの検証は現在進行中であるが、ANGPTL-KOでコントロールマウスと比較してBALF中のマクロファージ有意の細胞数減少を認め、病理組織学的解析では、ANGPTL4-KOで肺線維症改善の傾向を認めており、さらに解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年はコロナ禍による実験施設の閉鎖により予定していた実験が滞っていたが、本年はヒトIPF患者肺検体を用いたANGPTL4の発現部位の検討やヒトIPF患者血清を用いた血清ANGPTL4濃度の解析を行うことができた。また、In vitro実験においてはANGPTL4のEMT促進経路の検証や線維芽細胞におけるANGPTL4の役割の解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ANGPTL4欠損マウスを用いてブレオマイシン刺激肺線維症マウスモデルにおけるANGPTL4の肺線維症への影響を引き続き解析し、さらにANGPTL4中和抗体の購入を進めて肺線維症モデルマウスにおけるモノクローナル抗体を用いた治療の可能性についても検証していく予定である。
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