研究課題
若手研究
重症喘息は喘息診療における重要な課題であり、その病態に気道粘液の過分泌が示唆されるが、詳細は不明であり、有効性の確立された治療法もない。本研究では、重症喘息例を対象とした横断的臨床研究を行い、気道粘液の主成分である糖蛋白質ムチン(MUC5AC及びMUC5B)発現と喘息病態及び喘息コントロール状態との関連を明らかにすると共に、ムチンを標的とする新たな重症喘息治療を確立するための基盤をつくる。
申請者らは、先行研究で未治療喘息患者の喀痰中ムチン濃度が気道過敏性及び気道の2型/好酸球性炎症に関連することを見出した。また治療下中等症ないし重症喘息患者の喀痰症状が喘息コントロール及び喘息関連QOLと関連することを見出した。今回の研究で治療下重症喘息患者(n=64)のせきと痰に関する質問票(CASA-Q)に基づく喀痰症状及び喀痰インパクトが喘息コントロール及び及び喘息コントロール不良因子数及び喘息関連Quality of lifeと有意に関連するが、気道炎症及び気流閉塞とは関連しないことを見出した。現在、誘発喀痰中MUC5AC及びMUC5Bとこれら臨床指標との関連を解析中である。
抗喘息薬治療中の重症喘息患者において、喀痰症状は残存しやすい症状の一つである。今回の研究では、重症喘息患者における喀痰症状が喘息コントロールや喘息関連QOLの悪化と関連することを見出した。喀痰中ムチン濃度が喘息の主要病態である気道過敏性及び気道の2型/好酸球性炎症と関連する我々の先行研究結果も考慮すると、喀痰症状を標的とした治療の開発と管理は喫緊の課題である。我々は現在進行中の臨床研究で2型炎症に関連するサイトカインを標的した治療が喀痰症状の管理に有用であることも確認した。重症喘息患者における喀痰症状の臨床的意義を確認した点において、先行研究及び今回の研究成果は社会的に有意義であると考える。
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Allergology International
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