研究課題/領域番号 |
21K16259
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒 隆英 北海道大学, 大学病院, 助教 (50845302)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 肝臓GVHD / 移植片対宿主病 / 肝臓 / 腸内細菌叢 |
研究開始時の研究の概要 |
移植片対宿主病(GVHD)は同種造血幹細胞移植における致死的合併症であり、皮膚・腸管・肝臓が主たる急性GVHDの標的臓器である。腸管GVHDの発症メカニズムが明らかになりつつある一方、肝臓GVHDについては未だ不明な点が多い。肝臓は門脈・胆管を介して腸管と双方向的に密接に連携して生体防御に関わっており、腸内細菌叢の変化と各種肝疾患との関連性が報告されているが、肝臓GVHDとの関連性は不明である。本研究では肝臓GVHDのマウス同種移植モデルを確立し、各種免疫担当細胞や各臓器の細菌叢を解析することで、腸内細菌叢が肝臓GVHDの病態形成に与える影響を明らかにし、新たな治療標的となりうるかを検討する。
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研究実績の概要 |
これまで用いてきたGVHDのマウスモデル(ドナーにB6マウス、レシピエントにBDF1マウスを用いたMHC半合致骨髄移植モデル)を用いてGVHDの病態形成機序に関する検討を引き続き行った。 これまでの結果から、肝臓においてはトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)が特異的に上昇していることが明らかとなり、その産生細胞が炎症性マクロファージであることがわかっている。肝臓GVHDではこの炎症性マクロファージが産生するTGFβによって胆管上皮が傷害を受けることにより肝臓GVHDの病態が形成されることが明らかとなった。 一方、下部消化管GVHDにおいては腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)がGVHDの病態形成に重要な役割を果たしていることが知られているが、肝臓や上部消化管でのGVHD病態形成への腸内細菌叢の関与については不明な点が多い。 我々は上記モデルを用いて、これらの臓器におけるGVHDと腸内細菌叢との関係性について解析を進めた。上部消化管についてはGVHDによってLGR5陽性の胃幹細胞が傷害を受けており、結果として胃酸分泌の低下が生じて十二指腸における好気性細菌の異常増殖へと繋がることが明らかとなった。十二指腸におけるdysbiosisは最終的にはより下部消化管のdysbiosisへとつながってさらなるGVHD悪化を導く。また、肝臓は胆管/胆汁を介して腸管(特に十二指腸)とつながっており、両者の間でなんらかのクロストークが行われている可能性があり。実際、肝臓では同種移植後に胆管周囲に細菌浸潤が生じることを免疫染色で確認できていることから、異常な腸内細菌叢が肝臓内へ浸潤して炎症を惹起して肝臓GVHDの病態形成へとつながっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上部消化管GVHDの発症メカニズムについては明らかとなり、結果として十二指腸における細菌叢の乱れが生じることが明らかとなった。一方で肝内に浸潤する細菌叢や胆汁内に存在する細菌叢についての解析は、免疫染色による定性的な評価はできているものの、浸潤する細菌量が腸管に比較して少ないこともあって、定量的にはまだ解析が十分に行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は肝臓内や胆汁内の細菌叢に関する適切な評価方法を確立することで、菌叢の相同性/相違性についての評価を行いたいと考えている。
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