研究課題
若手研究
悪性リンパ腫の発生・進展と免疫機構の間には密接な関連が想定され,一部の悪性リンパ腫では自然退縮が報告されているが,具体的なメカニズムは明らかとされていない.viableな検体を必要とする分子生物学的解析において,自然退縮を来したリンパ腫の解析は困難であったが,今回,申請者はホルマリン固定後の組織検体を用いたデジタルオミックスアナライザー遺伝子発現解析により,リンパ腫自然退縮例における遺伝子発現の差異を明らかとすべく研究を計画した.自然退縮に関連するとして同定できた遺伝子群は,有力な予後予測因子となり得るのみならず,長期寛解を誘導できる新たな治療標的になると期待される.
免疫不全関連リンパ増殖症(IA-LPD)の一部は自然退縮しうるが,そのメカニズムは明らかとされていない.自己免疫疾患治療中に悪性リンパ腫を発症した10例,固形臓器移植後のLPD 2例について(併せてID群12例),ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの核酸抽出,デジタルオミックスアナライザーを用いた遺伝子発現解析を行った.クラスタリング解析を行ったところ,ろ胞性リンパ腫12例とのデータ比較で,ID群における発現で有意に差のある67遺伝子を抽出することができ,そのうち,ID群の中での組織型での差を認めない47遺伝子が,IA-LPDの発症に関連する可能性が考えられた.
悪性リンパ腫には様々な組織型が存在し,概して化学療法や放射線治療に対する感受性が高いが,化学療法抵抗性を示す症例の予後は悪く,その治療開発は喫緊の課題となっている.昨今,様々な分子標的薬が開発され臨床応用されているが,依然として予後不良なリンパ腫の予後改善には不十分である.腫瘍縮小を目標とする従来の分子標的薬と違い,自然退縮を誘導する遺伝子が治療標的となれば,治癒,長期寛解が期待できる可能性があると考えられる.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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