研究課題/領域番号 |
21K16327
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
青木 弘太郎 東邦大学, 医学部, 助教 (50821914)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 血流感染症 / 全ゲノム解析 / ナノポア型シークエンサー / Flongle / MinION / メタゲノム解析 / ナノポアシークエンス / WGS-AST |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、感染症診療に貢献しうるタイムコースで実用可能な、高速かつ網羅的な血流感染症の診断および薬剤耐性遺伝子検査系の開発を目的とする。血流感染症の原因菌の解析にはナノポア型リアルタイムシークエンサーを用いる。血液培養陽性検体について、高速にDNAを抽出後、迅速前処理工程を経てナノポア型リアルタイムシークエンサーで解析することで、原因菌の菌種を同定すると同時に網羅的に薬剤耐性遺伝子を検索する。本解析の結果は、同じ検体から分離された菌株の全ゲノム解析ならびに薬剤感受性検査結果と突合することで検証する。また、簡易なナノポア型リアルタイムシークエンスデータ情報解析ツールの開発にも取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究は、血流感染症の原因菌についてサブカルチャーを経ずに逐次的に全ゲノム解析 (WGS) する検査法の開発を目的としている。検査法の開発にはイルミナ社のハイスループットシークエンサー (HTS) で既にWGSが完了している菌株をモデルとして用いた。これらの菌株を研究代表者から血液培養ボトルに採血した全血へ菌株をスパイクして培養した擬似的な血液培養検体を作成し、本検査法へ供した。2022年度までに検討していた高速簡易DNA抽出法では、本検査法で用いるオックスフォード ナノポア・テクノロジーズ (ONT)のHTSであるFlongle R9.4.1のスループットへ悪影響があったことから、DNA抽出方法を変更した。変更したDNA抽出方法では全血から回収した菌体に対してビーズによる物理的破砕とmagLEAD SV PS (プレシジョン・システム・サイエンス: PSS) プロトコールを組合せた。 モデル菌株として用いた6菌種・各5株、計30株のうち、Rapid Barcoding kit SQK-RBK004とFlongle R9.4.1によるWGSデータから、それらの菌種は問題なく同定された。Enterocccus属菌以外の25株ではイルミナHTSで検出されていた獲得性耐性遺伝子がすべて検出されたのは11株、8割以上が15株、半数以上が21株だった。Enterocccus属菌では情報解析に耐えられるFlongleでのスループットが得られなかった。Sequence depthが多く得られた場合、良好な解析結果が得られた。なお、保存DNAついて上位互換のMinION R9.4.1でWGSしたところ解析結果が改善したため、一部のサンプルでは偶発的なFlongleの出力不良が否定できなかった。Enterocccus属菌はライブラリ調製キットを変更することでスループットの改善が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は国際共同研究強化(A)の研究課題について優先的に取り組んだ。 2022年度に引き続き、イルミナHTSによるWGS解析で菌種および獲得性薬剤耐性遺伝子 (ARGs) が明らかな菌株をスパイクして培養した擬似血液培養検体を用い、ONTのHTSによる逐次WGSプロトコールの妥当性の確認と改善を行った。菌株はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Acinetobacter baumannii, Staphylococcus aureus, およびEnterococcus spp.の6菌種/属について5株ずつ、計30株を供した。血液培養液から抽出したDNA溶液についてRapid Barcoding Kit SQK-RBK004により調整したライブラリをFlongle R9.4.1およびMinION R9.4.1 (いずれもONT) で解読した。Enterocccus属菌5株を除く25株では、Fongle出力データ量増加に伴いARGs検出数も増加した。同DNAから調製したライブラリをMinIONで解読したところ、20/25株ですべてのARGsが検出された。 Enterocccus属菌5株について、寒天培地に培養された菌株から抽出したDNAについてONTでWGSしたところ、十分なスループットが得られ問題なく菌種同定と獲得性ARGs検出ができた。このことから、 同属菌に限っては血液培養された菌株から抽出されたDNAと上述のONT WGSプロトコールの相性が良くないと考えられた。5株のうち1株についてライブラリ調製キットをトランスポゼースに基づく原理からライゲーションに基づく原理へ変更してFlongle R10.4.1を用いてWGSを行った結果、スループットが大幅に改善された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に得られた結果から、Enterococcus属菌の血液培養検体からサブカルチャーを省略したWGSを行うには特異的なプロトコールが必要であることが明らかとなった。今後、5株のうちの残りの4株についても同プロトコールを適用し、スループットに問題がないことを確認する。また、これまでに用いたバージョンR9.4.1フローセルはすでに市場で利用できなくなり、R10.4.1へ置き換わったことから、必要に応じて新バージョンのフローセルによるデータ取得を試みる。 本研究は、国際共同研究強化(A)で実施している「薬剤耐性菌院内伝播防止対策に資する高速WGS菌株伝播解析プラットフォームの開発」と強く関連していることから、本研究で実施している情報解析パイプラインを当該プラットフォームへ統合する。また、統合された情報解析プラットフォームにグラフィカルユーザーインターフェースを付与し、webブラウザを介して外部端末からも解析を実施可能にする。
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