研究課題/領域番号 |
21K16330
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
小谷 治 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 主任研究官 (00769581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エンテロウイルスA71 / カプシド蛋白質 / 相互作用ネットワーク / エンテロウイルス / 構造ゆらぎ / カプシドタンパク質 / 分子動力学法 |
研究開始時の研究の概要 |
ノンエンベロープウイルスの粒子最外殻に位置するカプシド蛋白質の変異は、ウイルスの受容体指向性、抗体感受性、病原性などの様々な生物活性の変化に結びつく。しかし、変異の構造への効果を記述する構造情報の多くは欠落している。このため、変異がウイルスの性質変化を誘導するしくみは謎のままである。本研究では、エンテロウイルスA71(EV-A71)のカプシド蛋白質VP1をモデル分子とし、分子動力学解析と実験により変異がカプシド構造とEV生物活性に与える効果を並行して調べる。この基盤を用いて、VP1アミノ酸残基145の変異が同時に多彩な生物活性の変化を誘導する構造基盤を明らかにする。
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研究実績の概要 |
エンテロウイルスA71(EV-A71)カプシド蛋白質VP1の145番目のアミノ酸(VP1-145)変異はEV-A71の増殖能、病原性、中和感受性など多彩な性質を同時に変化させることが知られている。しかし、これら一連の変化の分子機序はほとんど謎のまま残されている。昨年度はカプシド五量体モデルを構築し、VP1-145と連動して動く複数のアミノ酸で構成されたネットワークが存在することを見出した。今年度はVP1-145変異がカプシド蛋白質と宿主分子間の相互作用に与える影響を調べる。初めに、EV-A71カプシド蛋白質と宿主のEV-A71受容体Scavenger receptor B2 (SCARB2)やEV-A71中和抗体Fabの複合体モデルをそれぞれ構築した。EV-A71カプシド蛋白質は昨年度構築したモデルを用いた。それらの複合体モデルから、VP1-145Gと145Eの変異体モデルを構築し、分子動力学(MD)シミュレーションを200nsまで実施し、溶液で準安定な複合体構造を獲得した。MD計算で得られた時系列座標データからRMSDの推移を算出した。その結果、MD計算中に宿主分子がカプシド蛋白質から離れるなどの大きな構造変化はみられなかった。次にVP1-145変異が宿主分子の結合能に与える影響を調べるために、カプシド蛋白質と各宿主分子間の結合自由エネルギーを算出した。その結果、変異による受容体SCARB2親和性に変化は見られなかった。一方、中和抗体Fabとの親和性はVP1-145Eより145Gの方が高い傾向が見られた。その要因を調べるために、カプシドと抗体間で形成される水素結合ネットワークを解析した結果、VP1-145変異により相互作用ネットワークが変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EV-A71のカプシド蛋白質/宿主受容体とカプシド蛋白質/中和抗体FabのMDシミュレーションの解析環境を整備した。しかし、予定より各宿主分子とカプシド間の結合自由エネルギーの計算条件の検討に時間がかかっているため、実験でのウイルスの生物活性評価が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
計画どおり、実験での変異ウイルスの生物活性評価をすすめる。さらに計算科学アプローチでは、MDシミュレーションで得られたEV-A71カプシド蛋白質と各種抗体Fabおよび宿主受容体の複合体モデルとその変異体モデルの時系列座標データを用いて、VP1-145変異が宿主分子との相互作用に与える影響を詳細に解析する。また、VP1-145以外に宿主分子との相互作用を制御するカプシド責任領域の有無を調べる。
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