• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

代謝特性の異なる遅筋と速筋に着目した糖尿病における骨格筋障害の発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K16371
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分54040:代謝および内分泌学関連
研究機関福岡大学 (2022-2023)
九州大学 (2021)

研究代表者

横溝 久  福岡大学, 医学部, 講師 (60866747)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
キーワード糖尿病 / 骨格筋障害 / 骨格筋代謝 / SGLT2阻害薬 / 遅筋 / 速筋 / エネルギー代謝 / 糖尿病合併症
研究開始時の研究の概要

骨格筋は運動機能に加えてエネルギー・糖代謝制御に重要であり、代謝特性の異なる遅筋と速筋で構成される。本研究では糖尿病モデル動物を用いて糖尿病に伴う遅筋と速筋の質的量的変化と代謝物変化など骨格筋障害の病態解明を図る。加えてSGLT2阻害薬の代謝変化作用に着目し、SGLT2阻害薬投与に伴う遅筋と速筋の質的量的変化と代謝物変化が全身のエネルギー代謝を制御する機序について検討する。骨格筋の代謝特性に着目して遅筋と速筋の生理学的、病態学的役割を明らかにすることで、骨格筋の質的量的な維持・改善と有効な治療応用について検証する。

研究実績の概要

骨格筋は運動機能に加え糖代謝制御に重要であり、遅筋と速筋で構成される。遅筋は酸化的リン酸化が優位であり、持久運動に適する一方で、速筋は解糖系が優位で、収縮速度が速く、瞬発型運動に適する。糖尿病はサルコペニアの危険因子で、2型糖尿病の骨格筋において、特に遅筋が減少するとの報告がある。そこで研究代表者らは非糖尿病マウスを用いて、代謝変化作用を有するSGLT2阻害薬Canagliflozin(CANA)が骨格筋に与える影響を検討した。CANA投与により摂餌量増加を伴って速筋機能が亢進する一方で、遅筋機能は変化しなかった。Vehicle群とペアフィード(PF)してCANAを投与すると、速筋優位の機能低下・重量減少を認め、骨格筋メタボローム解析により遅筋と速筋に対するSGLT2阻害薬の作用が大きく異なることを見出した。SGLT2阻害薬が遅筋と速筋に対して質的量的に異なる影響を与えることを見出した本研究について学会発表を行い、Corresponding authorとして原著論文を報告した(Otsuka H., Yokomizo H., et al. Biochemical Journal, 2022)。
しかしながら、このような非糖尿病における糖喪失に対する骨格筋の代謝変化は、糖尿病で同様な変化が見られるかは不明である。SGLT2阻害薬は心不全治療薬として承認され、心筋への保護作用が報告されているが、糖尿病の骨格筋の重量と運動機能、特に遅筋と速筋に及ぼす影響や作用機序は十分に解明されていない。そこで本研究では、糖尿病モデルマウスへSGLT2阻害薬を投与し、遅筋と速筋について(A)骨格筋量と運動機能、代謝産物、シグナル分子を比較して骨格筋障害を評価する。加えて(B)代謝産物とシグナル分子の変化に着目して、糖尿病における骨格筋機能障害の分子メカニズムについて明らかにすることを目的とした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SGLT2阻害薬は腎における糖の再吸収を減少して尿糖排泄を通して異化反応を誘発するため、サルコペニア合併リスクが高い糖尿病患者の骨格筋萎縮を助長する懸念がある。本研究課題において、非糖尿病マウスを用いて代謝変化作用を有するSGLT2阻害薬が遅筋と速筋に対して質的量的に異なる影響を与えることを見出した(2022 Biochemical Journal)。
そこで、2型糖尿病モデルdb/dbマウスと対照db/+マウスを用いて、通常食あるいはCANA混餌食により4週間飼育し、CANA投与による骨格筋重量と運動機能を評価した。糖尿病では骨格筋重量は遅筋、速筋で減少したが、CANAは重量に影響しなかった。速筋機能(握力)は変化を認めなかったが、遅筋機能(持久運動)は糖尿病で低下し、CANA投与で改善した。メタボロミクス解析では遅筋においてDMでアセチルCoA低下と長鎖アシルCoA蓄積を認め、β酸化の停滞による供給低下が考えられたが、いずれもCANAで改善した。またCANA投与の遅筋にて内因性AMPK活性化物質AICARPが増加した。CANAは遅筋のAMP/ATP比を変化させずにAMPKリン酸化を亢進させたことから、AICARP増加によるAMPK活性化により遅筋で低下したβ酸化が改善し遅筋機能が改善した可能性が示された。
本研究結果は論文発表に繋がることができた(Nakamura S, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2023:14:2866-81)。したがって、本研究課題は糖尿病におけるSGLT2阻害薬の骨格筋への質的量的影響に関して、遅筋と速筋という代謝特性の異なる骨格筋について詳細に検討した点で新規性があり、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

我が国では高齢化によりサルコペニアやフレイルが問題となっている。糖尿病は骨格筋の量と機能が低下するサルコペニアを促進させるが、高齢糖尿病患者において骨格筋の機能評価を詳細に検討することは困難である。したがって、モデル動物を用いることで、遅筋と速筋に分けて骨格筋の機能変化を評価し、得られた知見をもとに病因や病態だけでなく、治療標的の探索に結びつく可能性がある。
本研究課題では引き続き糖尿病マウスへSGLT2阻害薬を投与した際の、遅筋、速筋における質的量的な変化を生理学的、分子生物学的に評価し、作用機序の解明を図る。遅筋、速筋における異なった骨格筋機能変化について、運動機能を決定する因子である①筋線維のMyHCタイプ、②シグナル伝達、③細胞内代謝に着目した検討を継続する。中でも③細胞内代謝、AICARPの役割に着目し詳細な解析を進める予定である。糖尿病はサルコペニアを促進させるが、遅筋と速筋それぞれの細胞内代謝に与える影響は十分に解明されていない。加えてSGLT2阻害薬による全身の代謝変化が糖尿病の遅筋と速筋の細胞内代謝に及ぼす影響は未解明であり、新たな知見が得られる可能性がある。
以上のように本研究課題において、非糖尿病マウスを用いて代謝変化作用を有するSGLT2阻害薬が遅筋と速筋に対して質的量的に異なる影響を与えることを見出した知見(2022 Biochemical Journal)と、糖尿病という病態モデルにおけるSGLT2阻害薬の骨格筋作用と臨床的意義について検討した知見(2023 J Cachexia Sarcopenia Muscle)とを組み合わせた計画を推進する。
今後の臨床において非糖尿病患者だけでなく糖尿病患者にSGLT2阻害薬を使用する際に遅筋と速筋に分けて骨格筋代謝へ及ぼす影響を十分に考慮する重要性を示しうる本研究の意義は大きいと考えられる。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Improved endurance capacity of diabetic mice during SGLT2 inhibition: Potential role of AICARP, an endogenous AMPK activator in the soleus muscle.2023

    • 著者名/発表者名
      Nakamura S, Miyachi Y*, Shinjo A, Yokomizo H, Takahashi M, Nakatani K, Izumi Y, Otsuka H, Sato N, Sakamoto R, Miyazawa T, Bamba T, Ogawa Y*.
    • 雑誌名

      Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle

      巻: 14 号: 6 ページ: 2866-2881

    • DOI

      10.1002/jcsm.13350

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Differential effect of canagliflozin, a sodium-glucose cotransporter (SGLT2) inhibitor, on slow and fast skeletal muscles from nondiabetic mice.2022

    • 著者名/発表者名
      Otsuka H, Yokomizo H*, Nakamura S, Izumi Y, Takahashi M, Obara S, Nakao M, Ikeda Y, Sato N, Sakamoto R, Miyachi Y, Miyazawa T, Bamba T, Ogawa Y*.
    • 雑誌名

      Biochem. J.

      巻: 479(3) 号: 3 ページ: 425-444

    • DOI

      10.1042/bcj20210700

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書 2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カナグリフロジンは遅筋内のAICARPを増加させAMPKの活性化による代謝亢進を介して肥満糖尿病マウスの遅筋機能を改善させる2023

    • 著者名/発表者名
      中村慎太郎,宮地康高,横溝久,大塚裕子,和泉自泰,高橋政友,佐藤直市,坂本竜一,宮澤崇,馬場健史,小川佳宏
    • 学会等名
      第66回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SGLT2阻害薬はAICARP/AMPK 経路の活性化により糖尿病マウスの遅筋機能を改善させる2023

    • 著者名/発表者名
      中村慎太郎、宮地康高、横溝久、大塚裕子、新城明仁、和泉自泰、高橋政友、 中谷航太、坂本竜一、馬場健史、小川佳宏
    • 学会等名
      第23回日本内分泌学会 九州支部学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SGLT2阻害薬が肥満糖尿病マウスの骨格筋代謝に与える影響の検討2022

    • 著者名/発表者名
      中村慎太郎、横溝久、大塚裕子、和泉自泰、高橋政友、佐藤直市、坂本竜一、 宮地康高、宮澤崇、馬場健史、小川佳宏
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 代謝特性の異なる遅筋と速筋に着目した、SGLT2阻害薬の骨格筋代謝調節の解明2022

    • 著者名/発表者名
      中村慎太郎、横溝久、大塚裕子、和泉自泰、高橋政友、佐藤直市、坂本竜一、宮地 康高、宮澤崇、馬場健史、小川佳宏
    • 学会等名
      第35回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 代謝特性に着目したカナグリフロジンの遅筋と速筋の代謝調節作用の解明2022

    • 著者名/発表者名
      大塚裕子、横溝久、中村慎太郎、佐藤直市、坂本竜一、宮地康高、宮澤崇、 和泉自泰、馬場健史、小川佳宏
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会 九州地方会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 代謝特性の異なる遅筋と速筋に着目したSGLT2阻害薬の骨格筋代謝調節作用の解明2022

    • 著者名/発表者名
      横溝久、大塚裕子、中村慎太郎、園田紀之、宮澤崇、和泉自泰、高橋 政友、馬場健史、小川佳宏
    • 学会等名
      第42回日本肥満学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] SGLT2阻害薬の骨格筋代謝調節作用2021

    • 著者名/発表者名
      大塚 裕子、横溝 久、中村 慎太郎、園田 紀之、宮澤 崇、和泉 自泰、馬場 健史、小川 佳宏
    • 学会等名
      第64回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi