研究課題/領域番号 |
21K16389
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伊藤 匠 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (80811835)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | トリプルネガティブ乳癌 / EGFR-TKI / 炎症性サイトカイン / IL-26 / 薬剤耐性 / Th17 / 腫瘍免疫 / 癌微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)では上皮成長因子受容体(EGFR)の高発現が認められるが、臨床でのEGFR阻害薬の有効性は乏しい。申請者は炎症性サイトカインのIL-26がTNBC細胞のバイパスシグナルを強力に活性化し、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の耐性を獲得させ、その作用機序として新規レセプターが関与する結果を得た。 本研究では、TNBCにおけるEGFR-TKI耐性獲得に特に重要な新規IL-26レセプターを特定し、IL-26のバイパス経路活性化のメカニズムを探索することでIL-26のより詳細な役割の解明を行う。
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研究実績の概要 |
EGFRを高発現するトリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞はEGFR-TKIの添加によって細胞死が誘導されるが、IL-26はEGFR-TKIによって誘導される細胞死を抑制し、EGFR-TKI耐性を獲得させることを見出した。このEGFR-TKI耐性メカニズムを解明するため、TNBC細胞株をIL-26刺激した遺伝子サンプルにDNAマイクロアレイを施行し、パスウェイ解析によっていくつかのシグナル経路の活性を見出した。 hIL-26Tgマウスを使用したTNBCの担癌実験では、TNBCはEGFR-TKIによる小胞体ストレス誘導時にIL-6, CXCL2などのサイトカインやケモカインを産生して免疫細胞を浸潤させることを見出した。 さらに、浸潤した免疫細胞より産生されたIL-26はこの小胞体ストレスを緩和してEGFR-TKIの耐性を誘導していることを見出した。 また、ヒトTNBC患者の組織を用いてCD4, CD8, CD68, CD163などの免疫細胞マーカーとIL-26との共染色を行ったところ、CD4陽性T細胞以外の細胞からもIL-26が産生されていることを明らかにした。 現在、CD4以外の細胞でどのような細胞がIL-26を産生するか調査しており、IL-26産生機序の詳細な解明を進める予定である。 また、今回hIL-26Tgマウスの担癌モデルにおいて、EGFR-TKIの耐性を獲得することが明らかになったため、IL-26が活性化するJNKやAKTの阻害剤との併用効果、樹立したIL-26抗体との併用効果を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR-TKIによる炎症性細胞の浸潤経路がin vivoで明らかにでき、EGFR-TKIを投与すると癌微小環境でIL-26が増加し、薬剤耐性に向かうメカニズムを明らかにできた。 さらに、IL-26産生細胞について発見があり、今後様々な癌におけるIL-26の役割を解明していくための手がかりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoのTNBC担癌モデルにおいてhIL-26TgマウスはEGFR-TKI耐性を獲得すること、その機序を明らかにした。そこで、樹立したヒトIL-26抗体を用いてEGFR-TKIとのコンビネーション治療を行い、IL-26がTNBCの新たな治療標的として有用であるか評価する。 また、IL-26の産生細胞およびIL-26の産生機序を明らかにし、他の癌種におけるIL-26の役割についても視野を拡げ、様々な癌におけるIl-26標的治療の確立を目指す。
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