研究課題/領域番号 |
21K16414
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松本 泰典 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80738831)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 胃癌腹膜播種 / 癌由来エクソソーム / 革新的個別化治療 / エクソソーム / 腹膜播種 / 胃癌 / 個別化治療 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、極めて予後が悪く、かつ治療法の限られる胃癌腹膜播種という病態に対し、 “患者癌由来の分泌小胞(エクソソーム)を治療薬の担体として用いた新規治療開発”を主目的とします。患者癌組織由来の動物モデルや細胞株の作成、癌細胞から抽出されたエクソソームを改変したり抗癌剤を封入することで癌への効果がどう変化するか、細胞レベルおよびマウスモデルで評価し、将来的に各患者の癌由来エクソソームを癌治療に使用する個別化治療につなげるための治験を得ることを目指します。
|
研究実績の概要 |
癌由来エクソソーム自体を用いた治療開発から計画を微修正し、癌由来エクソソームの全身性炎症およびがん悪液質への関与、癌由来エクソソームの微小環境(低酸素環境)における変化の解析などに解析対象を広げた。 がん悪液質モデルとして、胃癌細胞株(MKN45, NUGC4)を用いた皮下腫瘍および腹膜播種モデルにおける体組成を含めた推移を評価し、悪液質を反映するモデルの同定を行った。また、臨床検体を用いた解析も行い、胃癌悪液質とsPD-L1の関連を解明し、日本胃癌学会総会での学会発表および論文報告(Matsumoto Y. et al. Molecular and clinical oncology. 2023;18(5):39.)を行った。今後、癌由来エクソソームが癌悪液質に与える影響と治療介入の可能性につき継続して評価していく。 低酸素環境における癌由来エクソソームの変化として、食道扁平上皮癌細胞株(TE1, T.Tn, KYSE960)の低酸素環境下でのエクソソーム中に増加するmiRを同定した。その中でmiR-1246, miR-8084, miR455-3pに関して、TargetScanおよびmiRDBを用いた標的遺伝子を検索し、TET2, DCX, PSD3, PSIP1などが候補となった。今後、癌細胞株や組織での発現や機能解析につなげていく予定である。 胃癌PDXの作成、およびPDX由来細胞株の樹立は引き続き継続したが、細胞株の樹立は達成できなかった。同時期に樹立した小腸癌PDXより、長期間培養可能かつ造腫瘍能を有する細胞株を樹立することができ、今後胃癌細胞株の樹立を継続するとともに小腸癌細胞株においても癌由来エクソソームを対象とした治療開発をすすめていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年度の計画として、当初細胞株由来エクソソームへの薬剤封入による薬効評価を予定していたが、初年度の結果から治療効果の改善に関する知見は得られず、癌由来エクソソームの低酸素環境における変化の解析・機能解析や、癌由来エクソソームのがん悪液質への関与など解析対象を広げた。 胃癌悪液質に関しては、小動物用体組成計(InpediVET)を導入し、食餌水分摂取量・体重・体組成の経時的変化から以後の悪液質評価に至適なモデルとしてMKN45皮下腫瘍モデルを選定した。免疫分子であるPD-L1のマーカーとしての有用性に関して、悪液質を反映し術後の無再発生存に関与することを示した(Matsumoto et al. Mol Clin Oncol. 2023)。 食道扁平上皮癌細胞株(TE1, T.Tn, KYSE960)の低酸素環境エクソソーム中に増加するmiR-1246, miR-8084, miR455-3pに関して、TargetScanおよびmiRDBで標的遺伝子TET2, DCX, PSD3, PSIP1を抽出した。miR-1246に関しては当研究室より食道癌の予後マーカーとなることを示しており(Takeshita et al. Br J Cancer. 2013)、機序の説明となる可能性が示唆される。また低酸素誘導因子であるHIF-1αの食道癌での意義も報告した(Tang et al. Br J Cancer. 2022)。 胃癌PDXの作成、およびPDX由来細胞株の樹立は引き続き継続したが、細胞株は樹立できなかった。同時期に樹立した小腸癌PDXより、長期間培養可能かつ造腫瘍能を有する細胞を単離することができ、今後胃癌細胞株の樹立を継続するとともに小腸癌細胞株においても癌由来エクソソームを対象とした治療開発をすすめていく。 以上よりおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
胃癌悪液質に関しては、癌由来エクソソームが悪液質に及ぼす影響と治療介入への可能性を検討していく。特に脂肪や骨格筋に及ぼす影響に関して、共培養による変化、褐色脂肪化などin vitroでの評価を行う予定とし、予備実験に着手している。 腫瘍低酸素における癌由来エクソソームの変化に関しては、抽出された分子と治療抵抗性の関連、画像所見を含めた臨床病理学的な統合解析を行なっていく。特に放射線治療は低酸素環境の治療効果への影響が示唆されるため、治療経過や画像所見を含めた多角的な解析や、治療抵抗性の分子メカニズム解明につなげていく。癌細胞株や組織での発現や機能解析も継続していく。 今後胃癌PDXの樹立および細胞株の樹立を継続するとともに小腸癌細胞株においても癌由来エクソソームを対象とした治療開発をすすめていく。
|