研究課題/領域番号 |
21K16422
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
近藤 喜太 岡山大学, 大学病院, 助教 (50534765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | RNA editing / 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
潰瘍性大腸炎は、主として大腸粘膜を侵し潰瘍を形成する、自己免疫性の炎症性腸疾患である。発症機序はいまだ不明な部分も多く、難治症例が増加している。近年、自己免疫疾患の一つの全身性エリテマトーデス(SLE)の発症機序として、RNA塩基配列の変化(RNA編集)に伴うネオアンチゲンの生成と自己免疫の誘導が報告された。 今回我々は、このRNA編集理論を潰瘍性大腸炎に当てはめ、発症機序をRNA編集の観点から解析するとともに、RNA編集酵素阻害剤を用いた治療法を確立することとした。また、RNA編集酵素発現による潰瘍性大腸炎関連発癌予測バイオマーカーの構築も目指す。
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研究実績の概要 |
背景と目的:潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸炎関連大腸新生物(CAN)を発症する可能性がある。アデノシン-イノシンRNA編集は、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって制御され、AZIN1を含む重要な癌遺伝子の転写後修飾を誘導し、大腸癌の発生につながる。そこで、ADAR1がUCにおけるCANの発症に関与している可能性があると考えた。 方法:UC139例(急性期40例、寛解期73例、CAN26例)のコホートを系統的に解析した。炎症の程度はMayo endoscopic score (MES)を用いて評価した。 結果: 1型IFN関連炎症経路は、活動性UCの直腸、UC-CANの直腸、UC-CAN患者の腫瘍部位で発現が上昇した。ADAR1の発現はCAN症例の結腸全体でアップレギュレートされていたが、非CANのMES0症例ではダウンレギュレートされていた。直腸におけるADAR1発現は、p53やβ-カテニンよりもCANの発症をよく予測し、曲線下面積AUCは0.93であった。UCにおけるADAR1の高発現とAZIN1 RNA編集の高発現は、in vitro解析でFusobacteriumなどのUC特異的マイクロバイオームからの1型IFN刺激が引き金となった。フソバクテリウムによって発現が促進されるADAR1によるAZIN1 RNA編集の誘導は、UCの発がんを誘発する可能性がある。 結論:MES0型UC患者の直腸におけるADAR1発現を評価することでCANのリスクを評価することができ、UC患者を不必要な大腸内視鏡検査から解放し、患者の身体的負担を軽減することができる。RNA編集はUCの発癌に関与している可能性があり、UCにおけるCANの予防や治療を促進するために利用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床サンプルの解析は順調に完了している。炎症性腸疾患マウスモデルの構築を行いたいが、若干遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床サンプルの解析はおおむね終了した。今後は動物モデルを作成し、RNA編集を抑制することによる発癌抑制モデルを作成したい。
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