研究課題/領域番号 |
21K16474
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
矢野 修也 川崎医科大学, 医学部, 助教 (50794624)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 大腸癌 / EMT(上皮間葉転換) / イメージング / 遺伝子発現分類 / EMT / PDX / 大腸癌分類 / 蛍光イメージング / 間葉型EMT / EMT阻害薬 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子変異と網羅的遺伝子発現により、大腸癌は予後良好な通常型と予後不良な特殊型;MSI-H型と間葉型になった。分子サブタイプは通常型大腸癌の治療戦略を示したが、予後不良な特殊型大腸癌の治療標的を明らかに出来なかった。従い特殊型大腸癌の治療標的を明らかにする必要がある。我々が世界で初めて開発したEMT(上皮間葉転換)蛍光プローベを用いると、MSI-H型と間葉型大腸癌だけ化学療法に対しEMTを起こし耐性を示した。MSI-H型と間葉型大腸癌はEMT能力が治療抵抗性の原因で、治療標的となる。本研究では、EMTイメージングにより予後不良大腸癌におけるEMTの克服を軸とした新規治療戦略を目指す。
|
研究実績の概要 |
実績1. TCGAおよびCCLEの解析から、EMT型大腸癌はマイクロサテライト安定性かつRAS野生型に多く、マイクロサテライト不安定性に多く含まれていた。16000種の遺伝子発現解析、1600のシグナルパスウェイ解析から、間質増生を伴う大腸癌では、予想通りEMTに関連する遺伝子発現、シグナルパスウェイが亢進していた。 実績2. HCT116では5FU、オキサリプラチン(OX)、イリノテカン(IRI)では、EMT転換癌細胞76.9%、51.5%、53.5%に増加させたが、グリベック(IMA)は6.9%、9.6%、9.2%、レゴラフェニブ(REGO)、12.1%、16.7%、17.3%へ減弱させた。RKOでは、5FU、OX、IRIでは、EMT転換癌細胞78.5%、91.6%、65.7%に増加させたが、IMAは6.9%、7.7%、9.2%、REGO、18.3%、4.0%、11.4%へ減弱させた。SW480では、5FU、OX、IRIでは、EMT転換癌細胞91.3%、95.6%、88.1%に増加させたが、IMAは8.6%、6.4%、19.2%、REGO、17.2%、21.0%、8.1%へ減弱させた。 免疫組織学的検査にても、HCT116、RKO、SW480では5FU、OX、IRIは、有意にEMT関連タンパクを亢進させたが、IMAは有意に減少させた。 実績3. 間質の多い大腸癌をwhole slide imaging (WSI)で定量化し、TCGA597例全てのWSIで分化型、未分化型、粘液型、間質型に再分類した。遺伝子発現解析、シグナルパスウェイを組織型を加味して機械学習によりクラスター解析を行なった。組織型を加味することで初めて大腸癌をシグナルパスウェイで分類出来、シグナルパスウェイから組織型を予想することが可能になった。 実績4. 臨床で間質型大腸癌へのIMAとREGO使用を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の実験計画の一番重要なことは、EMT阻害剤を検証することである。 大腸癌細胞株HCT116とRKOに加え、SW480にEMT可視化プローベを導入した。5FU、オキサリプラチン(OX)、イリノテカン(IRI)などの殺細胞剤は、EMT転換癌細胞を有意に増加させ、IMAやREGOはEMT転換細胞を有意に減少させた。IMAやREGOはEMT阻害剤であることをイメージングにより明らかにした。 がん遺伝子パネル検査(CGP)でIMAを使用した実際の患者の検証も行ったところ、間質型でかつEMT発現型であった。実際IMAを使用した後、殺細胞剤と分子標的薬で著効した。さらに、細胞株による基礎的研究を臨床コホートであるTCGAに落とし込むことにより、間質型(EMT型)大腸癌を特徴を明らかにした。間質型(EMT型)大腸癌を、組織型とシグナルパスウェイで分類、定義出来た。すなわち、EMT阻害薬を使うべき候補を見出すことが可能になった。 以上から、EMT型大腸癌の抽出、EMTの克服=EMT阻害剤のスクリーニング、治療戦略の構築=臨床コホートによる治療戦略に合致した症例の検討、と本研究課題名に沿った進捗を得られていることより概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度の実験計画は、臨床コホートの検証することである。 計画1. TCGAによるpublic database大腸癌597例、申請者らのコホート解析。 大腸癌をwhole slide imaging (WSI)で定量化を進め、AIによる画像分類や画像検知を用いTCGA597例全てのWSIで分化型、未分化型、粘液型、間質型に定量化に基づいて再分類する。これに基づき申請者らのコホートでもWSIによる定量化を行う。 計画2. 16000種の遺伝子発現解析、1600のシグナルパスウェイを深層学習を用いた組織型分類も加味して、さらなるニューラルネットワークに基づいた機械学習によりクラスター解析を行う。組織型を加味することで初めて大腸癌をシグナルパスウェイで分類出来、シグナルパスウェイから組織型の予想を一致させる。これに基づき申請者らのコホートでもNGSによる遺伝子発現量と組織分類の関連性についての検討を行う。 計画3. 臨床コホートを用い、EMT阻害薬であるIMAならびにREGOの効果の有無を検証しEMT阻害薬の適応と治療戦略について検討する。
|