研究課題
若手研究
食道扁平上皮癌は予後不良な疾患であるが、近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が承認され予後改善が期待されている。ICIのバイオマーカーとして、PD-L1やMSI-Hが候補だが、ICIによる治療効果が不十分な症例が少なからず存在し、そのような症例における免疫回避機構は未だ明らかではない。本研究では、腫瘍組織の連続切片を作成し、複数の腫瘍免疫関連分子の免疫染色と、Laser microdissection法にて採取されたDNAを用いたExome解析を行う。腫瘍免疫微小環境と腫瘍細胞の遺伝子変化の解析から、腫瘍特性を細分化し、免疫回避機構を解明することで新たな免疫治療法の開発を目的とする。
切除検体495例のパラフィン包埋切片の作成に膨大な時間を要した。未染の分子マーカー及び、Laser microdissection法にて採取されたDNAを用いたExome解析を行い得られた情報から変異や増幅・欠失の解析を行う (Software; Mutect2, GISTIC解析等)。抽出した免疫因子と相関する癌細胞の遺伝子変化を抽出し、495症例でreal-time PCR法で検出する。食道扁平上皮癌における互いに相関する免疫学的因子と癌細胞の遺伝子変化を、495例を対象に臨床データとの統合解析を行うことで、これまで明らかにされていない食道扁平上皮癌の腫瘍免疫回避機構を明らかにする。
腫瘍免疫微小環境の解明は、近年、世界中で注目を集めている先端性の高い分野であり、我々も食道癌におけるPD-L1の発現と食道癌の予後に関与することを報告した(Yagi et al. Ann Surg. 2019)。治療としては、抗PD-1阻害剤の適応疾患も拡大しており、特にMSI-Hの固形腫瘍に対して適応になったことは初めての臓器横断的な適応となり、腫瘍の免疫学的特性をより細分化し治療効果を予測することの重要性が増してきていることを示している[TCGA, Nature. 2014, 2017]。このように腫瘍の免疫微小環境を解明することが新たな治療法の開発の一助となることが予想され注目に値する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
International Journal of Cancer
巻: 148 号: 5 ページ: 1260-1275
10.1002/ijc.33322