研究課題/領域番号 |
21K16501
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
荒川 衛 自治医科大学, 医学部, 准教授 (30624647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大動脈解離 / 模擬回路 / 3Dプリンタ / 大動脈瘤 / シミュレーター / ステントグラフト / 血管内治療 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
急性A型大動脈解離は致死的疾患であり緊急開胸手術を要するが、手術侵襲は極めて高い。近年、B型大動脈解離に対しては、低侵襲治療である血管内治療が適応となっているが、A型大動脈解離に対して適応はなく新たなデバイスの開発が望まれる。しかしながら、A型大動脈解離の治療は、既存のデバイスの応用では十分に対応できないため、デバイス開発の基盤が必要である。我々はすでに患者CT検査を元に実物大のA型大動脈解離3Dモデルを実装したシミュレーター回路を作成した。本研究では、A型大動脈解離のシミュレーター回路に更なる改良を加えたステントグラフトによる模擬治療を行い、A型大動脈解離治療における解剖学的要件を示す。
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研究実績の概要 |
令和3年度に、大動脈3Dモデルと模擬回路での計測結果をJouranal of Artificial Organsに原著論文として報告し令和4年度の主な実績は、複数のA型大動脈解離モデルの作成および、それに対応したステントグラフトの開発と模擬留置実験を行い36th Annual meeting of European Association of Cardiothoracic Surgeryで発表した。令和5年度は大動脈モデルのラインナップの、質の向上、血管内治療でのターゲットの検討を行った。ラインナップとしてはTEM分類(Type, Entry, Malperfusion)をもとに、A型大動脈解離とB型大動脈解離、エントリー位置を上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈に分けたモデルをラインナップとした。それに加えて、大動脈径、壁の厚さを変えて、大動脈解離の解剖に合わせた治療ターゲットを見出した。大動脈解剖の詳細データ取得はこれまで、汎用の解析ソフトウェアで計測したものを使用していたが、今回、共同研究で大動脈ステントグラフト術前ソフトウェアの詳細解剖データ取得が可能となった。また、また詳細解剖データから模擬治療に必要な部分で大動脈3Dモデルが作成できるようになった。今後大動脈ステントグラフト術前ソフトウェアでの計測結果と予定プランを、模擬回路で検証することが可能となり、目的であるA型大動脈解離のステントグラフト治療に必要な解剖学的要件とそれに対する治療方法の提示が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈解離、模擬回路実験を用いてステントグラフトでエントリーを完全に閉鎖させようとすると、凝固能という生体における重要な要素をされないため、模擬回路で計測できる偽腔血流を完全に制御する方針ではなく、解剖学的要件に的を絞ったモデルラインナップを作成し、偽腔血流の減少効果を示すことで、これまで示されている培った大動脈解離に対するステントグラフト治療で閉鎖が可能である状態を基準として、治療のゴールを示す方針とした。B型大動脈解離モデルも作成し、添付文書で示された要件での留置を行い、実臨床でエントリー閉鎖が可能であった症例をもとに、偽腔血流を透視下に示し、また減少した偽腔血流量を示すことで治療のゴールとしている、 2022年にA型大動脈解離に対するステントグラフト内挿術のFeasibility studyが報告され上行大動脈にエントリーがある場合はShort stent-graft、弓部から近位下行大動脈にエントリーがある場合は頚部分枝をBranched stent-graftで温存し、バイパスを併施する方針が示されている。我々の検討では、バイパスの併施を行わない方法での検討を行っており、弓部のエントリーに対する方法も示した。さらに、偽腔血流の減少効果が不十分である場合は偽腔処置と言われるOccluderなどの開発が報告されているが、本研究においても新規の偽腔処置方法とその効果についても検討を進めている。これらを合わせてどういった大動脈解剖にどの方法が必要かを客観的に示すためにステントグラフト術前計画ソフトウェアを用いて詳細な検討が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果をもとに大動脈解離のステントグラフト治療において重要な大動脈の形態を分類し、それをステントグラフト術前計画ソフトウェアで示すことである。現在、ステントグラフト術前計画ソフトウェアで作成した大動脈ポリゴンモデルから3D大動脈モデルを作成し、模擬回路実験が可能になっている。そこでTEM分類に基づいてA型大動脈解離、B型大動脈解離、エントリーが上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈のモデルを基本とし、上行大動脈がエントリーの場合は、Partial covered stent-graft, 弓部がエントリーの場合は, Island fenestration, 下行がエントリーの場合もPartial covered stent-graftもしくはtube stent-graftでのエントリー閉鎖を目指し、偽腔血流減少効果不十分なモデルに対して偽腔処置を加えることで頚部分枝の血流を温存し偽腔血流を制御する方法を見出す。
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