研究課題/領域番号 |
21K16574
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
板垣 大雅 徳島大学, 病院, 特任教授 (10464116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 横隔膜保護 / 人工呼吸 / 呼気努力 / 医原性横隔膜損傷 / ARDS |
研究開始時の研究の概要 |
人工呼吸中に自発呼吸が消失すると横隔膜は廃用性に筋萎縮を来し、この横隔膜萎縮は不良な転帰の原因となる。一方で、人工呼吸中の強い呼吸努力は肺傷害を来すため、重症呼吸不全の急性期には筋弛緩薬を用い、自発呼吸を消した人工呼吸管理が行われることがある。しかし、筋弛緩は横隔膜の萎縮を招く可能性があり、真に筋弛緩の恩恵に与る患者群は特定できていない。本研究では、肺保護目的に筋弛緩がなされた患者において、横隔膜萎縮や機能不全の発生頻度、関連因子を明らかすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本課題の主たる目的は、人工呼吸管理が横隔膜機能に与える影響を多角的に検討し、その予防に資する知見を見出すことである。近年、人工呼吸器からの離脱に失敗した患者の呼気筋群の収縮力が低下していることや、呼気筋群を用いた呼吸様式(呼気努力)が次第に強まるような患者が人工呼吸器からの離脱に失敗しやすい可能性が臨床研究で示され、呼気筋の影響に注目が集まっている。横隔膜機能の低下は人工呼吸器離脱を遅らせ、人工呼吸患者の不良な転帰に関係するが、呼気努力が横隔膜機能に与える影響は判っていない。 そこで、令和4年度は呼気努力が横隔膜機能に与える影響についての研究を開始した。令和3年度に確立した胃内圧、食道内圧の同時測定系を用いて患者登録を開始し、3症例の患者でデータ取得を行った。胃内圧と食道内圧の差である経横隔膜圧を測定し、呼気時の横隔膜収縮を観察し、呼気努力の指標である胃内圧との関係を模索した。同時に、呼気努力に影響を与えうる要素としてオピオイドの使用に着目し、呼気努力の変化を観察した。引き続き患者登録を進める。 令和4年度には先行研究である「人工呼吸開始後早期のdouble cyclingが横隔膜厚の変化に与える影響」が英文誌に掲載された。また、本課題準備過程で得た人工呼吸器関連横隔膜機能傷害について知識の整理と社会的認知度の向上のために総説の執筆を行ってきたが、令和4年度には和文誌、欧文誌それぞれに本テーマに関する総説が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度に胃内圧、食道内圧の同時測定系を確立し、令和4年度から患者登録を開始した。現在研究全体での目標患者数15に対して3症例の登録にとどまっている。その理由は以下である。 本研究では胃内圧測定が重要な要素となる。現在、胃内圧測定のために圧測定用のバルーンを胃内に留置しているが、本邦で入手可能なバルーンは径が細く柔らかいため、既に胃管が留置されている意識のある大多数の症例には留置することが極めて難しいことが判明した。胃管留置に先駆けて胃内圧測定用バルーンの留置を行う方針とし研究を進めているため、研究の進展に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の重要な観察項目に胃内圧測定がある。胃内圧と食道内圧の差から求まる経横隔膜圧が横隔膜活動の直接的なパラメータであるからである。同時に、この胃内圧は呼気筋活動の直接的なパラメータでもある。腹直筋,腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋からなる呼気筋群は,安静呼気時には収縮しないが必要に応じて動員され,呼気流速を上昇させることで強い咳嗽や肺過膨張の予防に寄与している。また、呼気努力は,呼気障害が存在するCOPD患者に特徴的だが,呼吸負荷が増大した場合にも見られる。近年、人工呼吸器からの離脱に失敗した患者の呼気筋力が低下していることや、呼気努力が次第に強まるような患者が人工呼吸器からの離脱に失敗しやすい可能性が臨床研究で示され、呼気努力の影響に注目が集まっている。生理学的にも呼気努力は呼気終末の胸腔内圧を低下させるため、肺胞虚脱を招き酸素化を悪化させる。虚脱した肺胞には再拡張時に炎症が惹起され肺傷害が進行することが指摘されている。呼気努力が横隔膜に与える影響も判っていない。そこで、呼気努力に影響する要因を明らかにすることは重要と考え、令和4年度から呼気努力を増大させる要因とその影響についての検討を開始した。呼気努力に影響する要因の一つとして指摘されているものにオピオイドの投与があるため、先ず始めにオピオイドの投与が胃内圧や経肺圧(肺そのものにかかる圧。気道内圧と食道内圧の差。肺傷害の指標)、経横隔膜圧をモニタリングしている。この検討の対象は当初の研究の対象に一致するため、一連の研究の主たる検討項目に加え、当初の目標登録患者数15に向けて本研究を推進する予定である。
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