研究課題/領域番号 |
21K16631
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
濱崎 佐和子 鳥取大学, 医学部, 助教 (80735267)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 海馬 / アルブミン / 血管内皮細胞 / 小孔 / てんかん |
研究開始時の研究の概要 |
てんかんは様々な要因により発病するが、その発作がいつどのような時に起こるのか、その発生機序は不明である。申請者は、僅かな血中Albの海馬への侵入が、海馬を病巣とする内側側頭葉てんかん発作の開始に関与する可能性を考え、本研究を立案した。血中Albの海馬への移行機序、および海馬ニューロンに与える影響を明らかにするとともに、Albの移行に影響を及ぼす外的刺激を検討することで、内側側頭葉てんかん発作の予防に繋げるための基礎を作り上げることを目指す。
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研究実績の概要 |
血中アルブミンが海馬に到達する機序を明らかにするため、海馬の血管にタンパク質の通過を可能とする構造があるのか否かを、形態解析を主軸として調べている。現在までに、海馬組織のRNAシークエンス解析により血管構造関連の遺伝子発現を調べ、タイトジャンクション等複数の血管内皮細胞間結合に関わる遺伝子に加えて小孔形成に関連する遺伝子が発現していることが明らかになった。さらに、解析途中ではあるが、海馬の一部の血管でそのタンパク質の免疫陽性反応が認められている。これらの結果から、海馬に有窓性毛細血管がわずかに存在する可能性が浮かび上がった。そこで、走査型電子顕微鏡を用いた微細構造解析により内皮細胞の小孔の有無を調べることを目的とし、手始めに、どの領域の毛細血管を観察するか決めるため、血中投与した色素が海馬のどこに漏れ出すか調べた。その結果、吻側領域の顆粒細胞層辺縁から歯状回門にかけて血中色素の存在が認められたため、その周辺の毛細血管を中心に微細構造解析を行った。脳の血管内腔には分厚い糖鎖の層が存在するため、走査型電子顕微鏡による内皮細胞の構造解析は困難であったが、試料作製の過程において糖鎖を溶かす工程を独自に加えることで改善された。そして解析途中ではあるものの、海馬歯状回の一部の毛細血管では部分的に内皮細胞に小孔様構造物が形成されている様子が認められた。血液脳関門があるため血中タンパク質は侵入することはないとされている海馬に有窓性毛細血管が存在する可能性を示唆する報告はこれまでになく、本研究成果は海馬血管構造について新たな知見を与える可能性がある。さらに、血中アルブミンが海馬機能に及ぼす影響について検討するため、アルブミンがニューロン活性に与える効果を電気生理学的に調べる準備を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に新型コロナウイルスの感染拡大により研究計画を変更せざるを得ない状況があった。また、海外から取り寄せの実験器具について納品までに数か月かかり、実験開始に遅れが生じたことも理由のひとつである。電子顕微鏡を用いた構造解析においては目的構造物の観察が当初の想定以上に困難で、試料作製方法の改善にかなりの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
血中アルブミンが海馬に移行する機序を明らかにするため、引き続き海馬毛細血管の形態解析を行う。困難だと思っていた走査型電子顕微鏡による内皮細胞の構造観察に活路が見出せたため、引き続き解析を行うとともに、透過型電子顕微鏡を用いた観察も組み込む予定である。また、形態解析と並行して血中アルブミンが海馬ニューロンに及ぼす影響を電気生理学的に調べる。
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