研究実績の概要 |
慢性硬膜下血腫形成においては、様々な炎症性サイトカインの関与が報告されてきています。一昨年には20症例の慢性硬膜下血腫において、炎症性サイトカインならびにケモカインであるinterleukin-8, GRO-alpha, ENA-78, MCP-1, IP-10, tPA, vWF, eotaxin-3の8項目の発現量につき、ELISAキットを用いて測定を完了しています。いずれも患者の血清と比較すると、慢性硬膜下血腫内においては、高濃度発現していることを確認しており、これらが血腫増大への強い影響が示唆され、内服薬との関連性など更なる検討が待たれるところである。 また、様々な作用効果のある細胞外マトリックスであるN-half osteopontinの発現が、血腫内において血清と比較すると有意に高濃度発現していました。一方、慢性硬膜下血腫の被膜においてはintegrin alpha-9 beta-1などのN-half osteopontinのreceptorの発現と、integrinのシグナル伝達系の下流であるFAK, paxillinやvinculinなどの発現もWBで確認することができた。免疫染色の結果では、integrin alpha-9とbeta-1, FAK, Paxillinは被膜の血管内皮において発現されており、被膜における血管新生に深く関与していることが判明した。 それに引き続き、昨年は、osteopontinそのもののreceptorであるCD44や、その下流に位置するankyrin-1, ezrin, radixin, moesinなどの蛋白発現もWBで確認できた。組織染色結果では、被膜の血管内皮において発現しており、こちらも血管新生に深く関与してきていることが判明した。今後これらの蛋白と内服薬との関連性などの更なる検討が待たれるところである。
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今後の研究の推進方策 |
8項目の炎症性サイトカインならびにケモカインの測定が完了しており、これらのデータと患者の薬歴におけるスタチン、エチゾラム、フェキソフェナジンなどの内服との関連性につき、今後更に検討の予定です。 また、細胞外マトリックスの慢性硬膜下増大への強い関与も示唆され、これらの発現蛋白量と薬歴との関連性について、今後検討予定です。 一方、基礎実験としては、ラット慢性硬膜下血腫モデルを作成して、今までの我々の検討してきたSmad, NF kappa B, MAPK, Autophagyやcaspaseなどのシグナル伝達系の発現につき検討を加え、更に上述の薬剤内服による効果に関して、今後更に検討を加えている予定です。
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