研究課題/領域番号 |
21K16648
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
津田 祐輔 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70896018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | シングルセル解析 / 軟部明細胞肉腫 / 腫瘍免疫 / 腫瘍免疫環境 / シングルセル遺伝子発現解析 / 骨巨細胞腫 / エピゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
骨巨細胞腫は骨を破壊しながら増大し患者の機能的予後に大きな影響を及ぼすが、その発生・進展機序の理解は不十分であり、治療法も外科的切除が困難な症例に関しては確立されていない。本研究では、骨巨細胞腫を構成する細胞を1細胞レベルで解析することで、骨巨細胞腫において、腫瘍内の構成細胞、遺伝子発現異常、エピゲノム異常を1細胞レベルで明らかにする。腫瘍細胞に高発現し破骨細胞を誘導するRANKLの阻害剤であるデノスマブを投与することで腫瘍内の不均一性や、腫瘍細胞、破骨細胞の遺伝子発現やエピゲノムがどのように変化するかを解明する。シングルセル遺伝子発現解析とシングルセルエピゲノム解析などの先端的な手法を駆使する。
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研究実績の概要 |
明細胞肉腫の原発巣、リンパ節のそれぞれ1検体から組織を採取し、1細胞ごとにdropletに分離し、Reagent Kits v3(10x genomics社)を用いてライブラリ調整した。Hiseq 2500にてシークエンスし、Cell Ranger 6.0を用いて、細胞ごとの遺伝子発現情報を取得した。R 4.0.2, Seurat 4.0を用い、feature RNA 500以上,ミトコンドリア遺伝子占有率15%以下の質の低い細胞のデータを除外した。リガンド-受容体解析にはnichenetrを用いた。 原発巣では4631細胞、リンパ節転移部では2322細胞を解析対象とした。2検体を統合し解析を行い、10個のclusterに分けアノテーションを行ったところ、Tumor、T cell、NK cell、Macrophage/Monocyte、Endothelial cell、Fibroblast、B cellが同定された。腫瘍内免疫環境の解析を行うと、特にリンパ節内のCD4+細胞やCD8+細胞は、BATF+ FOXP3+ CTLA4+ CD4+ T cell (Regulatory T cell, Treg)やLAG3+ PD1+ CD8+ T cell(Exhausted T cell)が多く、免疫抑制的な腫瘍環境を形成していた。T regはTGFβ1やCXCL12によって分化誘導されることが知られており、リガンド-受容体解析においてMacrophageやEndothelial cellのTGFβ1リガンドとT細胞におけるTGFβ1受容体、FibroblastのCXCL12リガンドとT細胞のCXCR4受容体との結合が示唆された。 シングルセル解析によって、軟部明細胞肉腫内の細胞集団不均一性が明らかになり、免疫抑制的な環境が構築されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症の蔓延により検体収集に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
検体数を増やし、シングルセル解析を行い、同様の所見が得られるかどうかを検討する。これらの検討から得られた結果をもとにして、遺伝子発現/エピゲノム異常をターゲットとした新規治療の可能性を探索する。新鮮腫瘍組織より樹立されたcell lineを使用して、治療標的となる遺伝子に関して遺伝子過剰発現・抑制実験により、増殖能をATP assayなどで測定し、コントロールの細胞株との比較を行う。また、足場非依存性増殖能を評価するためColony formationassay を行う。浸潤能を基底膜モデルキット、また、遊走能をScratch assayなどにより評価を行う。上記の結果より有望な治療標的が同定された場合には腫瘍細胞に対して薬剤を添加し評価を行う。ゼノグラフトモデルを作成して薬剤を投与し、腫瘍形成抑制効果を確認する。これらの結果をまとめて学会発表、論文作成を行う。
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