研究課題/領域番号 |
21K16657
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
三原 惇史 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60880177)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 骨癒合 / 骨リモデリング / 濃縮骨髄液 / 副甲状腺ホルモン / 抗スクレロスチン抗体 / 3D-FEM / 骨欠損 / 骨新生 |
研究開始時の研究の概要 |
良性骨腫瘍の外科的治療の基本は腫瘍の切除である。そのため、切除後には骨に欠損が生じ、一時的に手術した骨の部分が弱くなってしまう。骨欠損部により早く新しい骨が作られるように、これまで一般的に行われている人工骨の移植に加え、様々な補助療法を併用し、その骨癒合に対する有効性を検討する。骨欠損に対して、従来群として人工骨のみを移植する群と補助療法群として人工骨の移植と補助療法を併用する群に振り分け、X線やCT画像上の骨癒合までの期間、術後の生活への影響、安全性を比較する。
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研究実績の概要 |
本研究の最大の目的は、骨欠損における骨癒合・リモデリングを促進させる有効な手段を開発することであり、その手段として濃縮骨髄液(BMAC)に注目し、良性骨腫瘍の骨欠損に対してBMACの有効性を臨床試験によって検討する予定であった。しかし、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第3種への申請を行っていたが、当施設でBMACを用いることの認可がいただけていない状況が続いていた。その間に、使用予定であったテルモ社の濃縮骨髄液専用の遠心分離機である『スマートプレップ』の生産中止が決定し、本邦での機械の承認が取り消され、BMACを用いた研究が困難となった。 そこで、骨癒合・リモデリングを促進させる他の手段の開発を目的として、2種類の骨形成促進薬に注目した。1つは副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)であり、もう1つが抗スクレロスチン抗体である。PTH製剤は骨芽細胞(骨を作る細胞)の前身となる未熟な前骨芽細胞や幹細胞を増やすのと同時に、骨芽細胞へ分化を促す一方で、抗スクレロスチン抗体は未熟な細胞は増やさないが、強力に未熟な細胞を骨芽細胞への分化させる効果があることが分かっており、PTH製剤と抗スクレロスチン抗体の組み合わせは理論上、骨癒合・リモデリングに有利に働くと考えられる。 両方の薬剤を同時にヒトへ投与することは医療保険の観点より認められていないため、骨折モデルのマウスを用いた動物実験で両薬剤による有効性を検討している。片側脛骨の骨折モデルを作成し、2週間の薬剤投与期間を設け、PTH単独群、抗スクレロスチン抗体単独群、両薬剤併用群、一方の薬剤を1週間投与した後にもう一方の薬剤を1週間投与した群に分けた。2週の時点での力学試験、μCTを用いた画像評価は終了している。2週の時点での組織標本は作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた濃縮骨髄液を用いた臨床研究は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第3種への申請を行っていたが認可をいただけず、その間に使用機械の本邦での承認も取り消されたため、BMACを用いた臨床研究は困難となった。そのため、骨癒合・リモデリングを促進させうる代替案を検討し、副甲状腺ホルモン製剤、抗スクレロスチン抗体の組み合わせによる骨癒合促進効果について、動物実験によって実験を行っている。引き続き、動物実験を進めていく一方で、当初予定していた骨腫瘍によって骨溶解・骨欠損を起こした骨の強度を、3D-FEMモデルを用いてコンピュータシミュレーションを行う実験については、現在、良性骨腫瘍患者の医用画像を収集中である。コロナ窩を受けて、良性骨腫瘍の患者が極端に減っていたため、画像の収集はやや遅れている。これは良性骨腫瘍と診断されても生命に直接影響の少ない良性腫瘍であれば病院の受診控えなどが影響していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、骨癒合・リモデリング促進を目標とした代替案の副甲状腺ホルモン製剤と抗スクレロスチン抗体を組み合わせた治療法の有効性を求めるために、現在行っている動物実験を進めていく予定である。動物実験では、骨折後2週の段階での力学的試験とマイクロCTによる画像評価は完了しており結果が出ている。この結果を裏付けるため、またなぜそのような結果となったかについて、その背景を探るため、今後は組織学的評価を行う予定であり、現在組織標本の作製を行っている。また、各薬剤の投与による骨癒合の経時的な促進を評価するために骨折後3週の段階での評価を行うために、骨折後3週のマウスの作製を進めていく予定である。 骨腫瘍によって骨溶解・骨欠損を起こしている骨の医用画像の収集を続け、それらの医用画像を元に3D-FEMモデルを作成し、コンピュータシミュレーションを用いて骨強度を評価し、どの程度の骨溶解・骨欠損でどの程度の力学的強度の低下が見込まれるかについて知見を得ることで、患者のADL指導につなげることができると考えている。
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