研究課題/領域番号 |
21K16669
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 (2022) 国立研究開発法人国立がん研究センター (2021) |
研究代表者 |
申 育實 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任研究員(常勤) (70761352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肉腫 / 胞巣型横紋筋肉腫 / PAX7-FOXO1 / 希少がん |
研究開始時の研究の概要 |
胞巣型横紋筋肉腫(alveolar rhabdomyosarcoma, ARMS)は融合遺伝子タイプからPAX3-FOXO1あるいはPAX7-FOXO1を有するものに分類される。PAX7-FOXO1を有する細胞株は公的細胞バンクから入手不可である。またゼノグラフトやオルガノイドの報告はない。そのためPAX7-FOXO1融合遺伝子の機能については不明な点が多い。申請者は腫瘍組織を用いてPAX7-FOXO1融合遺伝子を有するARMSの患者由来がん細胞株およびゼノグラフトとオルガノイドを樹立した。本研究ではこれらを用いてPAX7-FOXO1融合遺伝子を有するARMSの治療法の開発に資する知見を得る。
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研究実績の概要 |
横紋筋肉腫は未分化な間葉系細胞から発生する軟部肉腫の一つである。これまでに3つの組織型が報告されているが、その中でも胞巣型は悪性度が高く、予後不良である。胞巣型横紋筋肉腫の90%以上で融合遺伝子が検出されており、それら融合遺伝子は診断にも利用されている。低・中リスク群においては手術、放射線療法、化学療法の集学的治療によって予後は改善されているが高リスク群においては標準治療は未確立である。 がん治療法の開発には古くから細胞株が用いられており、特に患者由来がん細胞株は生体内のがんをより反映したものとして薬剤スクリーニング等に活用されている。希少がんでは、患者の少なさ故に患者由来がん細胞株も入手し難く、それは希少がんである横紋筋肉腫においても例外ではない。特に、胞巣型横紋筋肉腫のうちPAX7-FOXO1融合遺伝子をもつ細胞株は公共の細胞バンクでは入手不可能である。研究代表者はこれまでに、PAX7-FOXO1融合遺伝子を有する患者由来がん細胞株の樹立に成功した。本研究ではその細胞株を用いてPAX7-FOXO1融合遺伝子をもつ胞巣型横紋筋肉腫の治療法開発に取り組んでいる。2022年度は、生体内のがん微小環境を再現することを目指して患者由来がん細胞株と脱細胞化組織を共培養したin vitro評価系を構築し、評価した結果を論文として公開するとともに、PAX7-FOXO1融合遺伝子の病態における役割解明を目指して免疫沈降を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、公共の細胞バンクからの細胞株取得が不可能であるPAX7-FOXO1融合遺伝子をもつ胞巣型横紋筋肉腫の患者由来がん細胞株を樹立し、それを用いて治療法の開発に資する知見を得るとともに、患者由来がん細胞株はがんの治療法の開発に本当に有効なのか検討することを目的としている。 生体内のがんとin vitro環境下のがん細胞の大きな違いは、がん微小環境の有無である。研究代表者が患者由来がん細胞株を樹立する際はその点を留意したうえで、がん細胞をクローニングせず、患者の腫瘍組織に含まれる線維芽細胞等を含んだヘテロな状態で作製・維持している。2022年度は、胞巣型横紋筋肉腫の発生母地である筋肉を脱細胞化処理したものと患者由来がん細胞株を共培養させることが生体内の環境を模倣したin vitro実験系となり得るか調べるために、脱細胞化組織の有無による患者由来がん細胞株内のタンパク質発現を網羅的に調べた。その結果、脱細胞化組織との共培養により、筋組織で機能するタンパク質の発現量の増加が促進されることが分かった。この結果は論文として公開済である。患者由来がん細胞株を患者生体内環境に近似させるためのin vitro実験系の開発を更に進めている。 PAX7-FOXO1融合遺伝子の病態における役割解明を目指して実施している免疫沈降については、PAX7-FOXO1融合タンパク質の検出作業が難航している。理由としては対象が融合タンパク質であるため使用できる抗体が限られている他、野生型PAX7は転写因子として機能するためそもそもPAX7-FOXO1融合タンパク質の発現量が少ない、タンパク質として不安定である等の可能性が考えられる。ただし本研究は最終段階として統合解析を予定しているため、PAX7-FOXO1融合タンパク質と相互作用するタンパク質情報が得られなかったとしても結果に大きな影響はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した研究の結果、生体内環境のタンパク質発現プロファイルと近似したin vitro実験系を構築可能な可能性がでてきた。患者由来がん細胞株には生体内のがん微小環境を十分に再現できていないという課題があるため、そのようなin vitro実験系を構築できれば、がんの治療法開発における患者由来がん細胞株の有用性が向上する。研究当初は統合解析に資するデータを取得するための手法の一つとして考えていたin vitro実験系を用いた解析であるが、今後、重点的に研究を行うことも検討している。 2023年度は、これまでに取得した大規模抗がん剤スクリーニングや質量解析の結果を用いた統合解析を実施し、PAX7-FOXO1融合遺伝子をもつ胞巣型横紋筋肉腫の治療法開発に資する知見を得るとともに、患者由来がんモデルを用いた多層的なアプローチの有用性を検証することを目指す。
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