研究課題/領域番号 |
21K16685
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
垣内 裕司 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40849212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オートファジー / 椎間板変性 / mTORC1阻害 / mTOR / 脊椎 |
研究開始時の研究の概要 |
椎間板は低栄養、低酸素の環境下に置かれており、椎間板変性をきたすことにより細胞外基質の分解や細胞死、細胞老化を起こすと報告されている。我々のグループは椎間板髄核細胞の生存、変性の予防にはオートファジーとそれを制御するmTORシグナル経路が重要な役割を担っていると考えた。そこで我々は細胞実験で、ヒト椎間板髄核細胞においてmTORC1阻害薬であるテムシロリムスによるmTORC1阻害がオートファジーの活性とAktの亢進をきたし、椎間板保護作用を来すことを報告した。今回、テムシロリムスの将来的な臨床応用に向けて、我々が確立した創外固定によるラット尾椎椎間板変性モデルを用いた動物実験を検討している。
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研究実績の概要 |
我々のグループは椎間板髄核細胞の生存、変性の予防にはオートファジーとそれを制御するmTORシグナル経路が重要な役割を担っていると考え、ヒト椎間板髄核細胞へのmTOR阻害による細胞保護効果を報告した。細胞実験において、上記の様にヒト椎間板へのテムシロリムスの保護効果を報告したが、ヒトへの臨床応用には動物実験が必要と考えられる。 本研究では臨床応用のためラット尾椎椎間板変性モデルを作成し、椎間板内へmTORC1阻害薬であるテムシロリムスを投与した後に椎間板変性を惹起し、変性過程を観察して対照群と比較して椎間板変性度が抑制されるかを調べることとした。 まずはラット尾椎髄核細胞に対してmTOR阻害の効果を確認するためsiRNAを用いてmTOR阻害を施行し、オートファジーを評価した。siRNAによるmTORC1阻害ではオートファジーが活性されることを確認した。またテムシロリムスの投与においてもmTORC1阻害の確認とオートファジーが活性されることを確認した。 今後細胞外基質同化因子、異化因子の遺伝子発現や蛋白合成の解析を施行し、同時にラット尾椎椎間板変性モデルを作成し椎間板内へテムシロリムスやsiRNAを投与した後に椎間板変性を惹起し、変性過程を観察して対照群と比較して椎間板変性度が抑制されるかを調べていく予定である。具体的な内容としては椎間板変性の程度評価項目として椎間板高(レントゲン)、組織学的変化(safranin-O, H-E染色)などの椎間板構造解析を行い、さらに椎間板組織(髄核と線維輪)の細胞外基質同化因子(アグリカン、コラーゲン)・異化因子(MMPs、TIMPs)の遺伝子発現をRT-PCR法にて、蛋白合成の解析を免疫組織学的染色やウェスタンブロッティング法にて行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は生体ラット尾椎椎間板へのsiRNA、テムシロリムス投与によるmTOR経路の選択的阻害が与える影響を検討している。mTORC1の特異的なタンパクであるRaptorとmTORC2の特異的なタンパクであるRictor、およびmTORに対する3種類のsiRNAを使用して生体ラット尾椎椎間板におけるmTOR経路の評価を行った。 これまでの細胞実験では上記3種類のsiRNAとテムシロリムスによりオートファジーの活性化を認めていたが、動物実験でもウエスタンブロッティング法により3種類全てのsiRNAでオートファジーが活性化と細胞死、細胞老化の抑制が確認された。さらにラット尾椎椎間板変性モデルラットを作成し、siRNAを投与した後に変性を惹起し変性過程を評価した。Raptor siRNA投与群では対照群と比較して椎間板高の低下が抑制されており、組織学評価(HE染色、Safranin-O染色)でも椎間板変性度が低い結果であった。mTOR、Rictor siRNAおよびテムシロリムスを用いた同様の実験も行っており、現在実験データを蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
生体ラット尾椎椎間板でもsiRNA投与によるmTOR経路選択的阻害によるオートファジーの活性化が確認できた。特にmTORC1の特異的タンパクであるRaptorに対するsiRNA投与は椎間板高低下の抑制および椎間板変性に対して保護的に作用する可能性が示唆されたため、mTORC1阻害剤であるテムシロリムスも同様の作用が期待される。 今後はウエスタンブロッティング法にてAktなどmTOR経路の上流のカスケードの評価や椎間板組織の細胞外基質同化因子(アグリカン、コラーゲン)・異化因子(MMPs、TIMPs)の遺伝子発現や蛋白合成の解析を追加する予定である。 また現在の実験はsiRNAやテムシロリムスを投与してから変性を惹起するモデルでの検討であるが、変性を惹起した後の椎間板に対しての影響についても検討予定である。具体的には椎間板変性モデルラットを用い、椎間板に静的圧迫を加え解除した後、4週待機し、椎間板変性が進行した状態でsiRNAやテムシロリムスを投与した際の影響を検討する予定としている。
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