研究課題/領域番号 |
21K16700
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小川 哲也 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (10866916)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 糖代謝イメージング / 蛍光L-グルコース / 2-NBDLG / ヒト骨肉腫 / SP分析 / SP細胞 / 抗癌剤耐性 / ABCトランスポーター / 肉腫 / 蛍光グルコース / がん幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
一般的なグルコースであるD-グルコースの鏡像異性体L-グルコースは、哺乳動物の細胞に取り込まれず、代謝もされない。近年、L-グルコースに蛍光基を結合した2-NBDLGが、悪性細胞に特異的に取り込まれる可能性が示され注目されている。我々は骨や軟部組織から発生する悪性腫瘍である肉腫の細胞が、2-NBDLGを取り込むことを確認した。2-NBDLG投与後の肉腫細胞の蛍光強度は細胞によって異なることから、同じ腫瘍細胞でも糖代謝が異なる細胞が混在すると考えた。本研究では抗癌剤耐性を有する肉腫細胞と通常の肉腫細胞を使って抗癌剤耐性と2-NBDLG取り込みとの関連性を明らかにすることを目標とする。
|
研究実績の概要 |
近年、D-グルコースの鏡像異性体L-グルコースに蛍光基を結合した蛍光L-グルコースが、悪性細胞に特異的に取り込まれる可能性が示され注目されている。我々はヒト骨肉腫U2OS細胞が、正常細胞が取り込まない2-NBDLGを取り込むことを確認した。また2-NBDLG投与後の蛍光強度が個々の細胞によって異なることから、U2OS細胞には糖代謝が異なる細胞、すなわち蛍光L-グルコースを豊富に取り込む細胞とほとんど取り込まない細胞が混在すると考えた。本研究は2-NBDLGの取り込みと腫瘍細胞の抗癌剤耐性の関係を検討する。抗癌剤ドキソルビシン(DOX)添加培地で増殖する抗癌剤耐性U2OS細胞を作成した。作成したDOX耐性U2OS細胞が SP分析可能か検討した。SP分析の結果は通常培養U2OS細胞と比較してSP細胞の割合が有意に増加した。そこでU2OS細胞を通常培地で培養した通常群、培地にDOXを加えて培養したDOX群、DOX群をHoechst33342で染色したのちにFACSを用いてSP細胞を分取したSP群を準備しFACSで蛍光グルコースの取り込みを評価した。DOX群はHoechst33342を排出する細胞群が有意に増加した。その薬剤排出能はverapamil(ABCB1阻害剤)によって阻害され、排出の主体はABCB1によるものであることが明らかとなった。またDOX群は通常群に比較して2-NBDLGが2-NBDGとほぼ同量に取り込まれ、DOX耐性細胞で蛍光グルコースの代謝変化が示唆された。通常群と比較してSP群もDOX群と同様に2-NBDGに対する2-NBDLG取り込みの割合が増加した。この取り込みはPhloretin投与で減少したことから、2-NBDLGは細胞の幅広い輸送機構を利用して選択的に取り込まれている可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DOX耐性U2OS細胞に2-NBDG、2-NBDLGを投与し、FACSを用いて細胞集団の蛍光強度を定量評価した。また、グルコーストランスポーター阻害薬Cytochalasin B、GLUT・水チャネル阻害剤であるPhloretinを使用して蛍光グルコース取り込み阻害効果を評価し、DOX耐性U2OS細胞の2-NBDLG取り込みに関する薬理学的性質を検討した。DOX培養することで、Hoechst33342を排出する細胞群が有意に増加した。それらの薬剤排出能はverapamilによって阻害されたことから、Hoechst33342排出の主体はABCB1によるものであることが明らかとなった。またDOX群では通常群に比較して2-NBDLGが2-NBDGとほぼ同量に取り込まれ、DOX耐性細胞で蛍光グルコースの代謝変化が示唆された。 さらにU2OS細胞を通常群、DOX群、DOX群をHoechst33342で染色したのちにFACSを用いてSP細胞を分取したSP群に分類し、その性質を検討した。通常群と比較してDOX群やSP群は2-NBDGに対する2-NBDLG取り込みの割合が増加した。この取り込みはPhloretin投与で減少したことから、2-NBDLGは細胞の幅広い輸送機構を利用して選択的に取り込まれている可能性が示唆された。DOX群やSP群は通常群と比較してグルコース代謝が変化しており、蛍光グルコースの代謝評価は薬剤耐性を有する細胞集団を識別できる可能性が示された。また、SP細胞の2-NBDLG取り込みから、2-NBDLGの投与で通常細胞とSP細胞が区別できる可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
U2OSのSP細胞の性質を調べるため、コロニー形成率(増殖率)、スクラッチアッセイによる細胞遊走能・増殖能、細胞の未分化マーカーを用いた免疫染色等を行う。多剤耐性について、DOX以外の抗癌剤存在下でのコロニー形成率実験を行う。また、共焦点定量イメージサイトメーター(CQ-1:Yokogawa Electric Co.)を使用して細胞単独の蛍光強度の定量評価とイメージングを行う。さらにデータの信頼性向上目的にサンプル数を増やす。
|