研究課題/領域番号 |
21K16709
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤原 智洋 岡山大学, 大学病院, 助教 (80639211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 肉腫 / 微小環境 / 腫瘍随伴マクロファージ / 免疫療法 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究開始時の研究の概要 |
悪性腫瘍に対する近年の免疫療法の発展は目覚ましいが、肉腫においては免疫チェックポイント阻害薬等の有効性は限定的であることが明らかにされ、従来の治療薬の枠組みを超えた新しい治療法の創出が急務とされる。近年、腫瘍微小環境の主要な構成細胞である腫瘍関連マクロファージが、免疫チェックポイント阻害薬の後を継ぐ次の重要な腫瘍免疫のターゲットになることが期待されている。本研究は、腫瘍関連マクロファージの浸潤・分化を促すCSF-1/CSF-1Rやその他の特定シグナルの阻害による治療的効果を検討すること、従来の治療法と併用し、肉腫における新規治療法としての実用化に向けた前臨床的検討を行うことが目的である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、肉腫に対するTAMを標的とした免疫療法の有効性および安全性を検討し、新しい治療戦略としてのレジメンを創出することである。肉腫は従来の化学療法、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などに抵抗性の強い組織型が多く、新しい治療法の有効性が認められれば、学術的だけでなく社会的な意義も大きい。 本年度は骨肉腫に対するTAM標的免疫療法の前臨床的有効性を証明し、そのメカニズムを解析した。使用した薬剤は、TAMの分化に重要なCSF-1/CSF-1R経路を遮断するPLX3397(CSF-1R阻害剤)である。これまでにLM8培養上清およびCSF-1を用いてC3Hマウス骨髄細胞(bone marrow-derived macrophage, BMDM)から肉腫TAMモデルを作製している。LM8の培養上清はCSF-1と同様にBMDMにおけるpERKを誘導しM2方向へ分化させ、CD45+CD11b+CD206+TAMを生成することを見出した。PLX3397によりBMDMのpERKは阻害されM1方向への分化が生じ、TAMの生存・遊走は双方とも阻害されることを確認した。この度、マウス骨肉腫高転移性株であるLM8を用い、同所移植マウスモデルではPLX3397(10 mg/kg/w)の全身投与により、明らかな毒性なく、腫瘍増大および肺転移形成は有意に抑制されることを確認した。免疫染色より、PLX3397により腫瘍微小環境におけるCD68陽性細胞(汎マクロファージ)およびCD206(M2型マクロファージ)の減少、CD8陽性T細胞の浸潤増強が確認された。また、FOXP3陽性T細胞(制御性T細胞)の減少も確認されたことから、CSF-1R阻害剤によりTAMだけでなくリンパ球を含めた細胞割合が変動し、微小環境における構成が抗腫瘍作用を示す環境へと変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肉腫各組織型のTAMに対するPLX3397の有効性・安全性および肉腫微小環境に与える影響の検討を、以下の内容で計画していた。(1)肉腫細胞由来サイトカインの網羅的解析と分泌サイトカインを用いたin vitro TAMモデルの構築(令和3年度)(2)In vitroにおけるPLX3397の肉腫細胞株および肉腫由来TAMモデルに対する有効性の検討(令和3-4年度)(3)In vivoにおけるPLX3397の有効性・安全性の評価および肉腫微小環境への影響の検討(令和3-4年度)。今年度は、骨肉腫に対し、(1)-(3)の内容を証明した。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
肉腫の他の組織型に対するPLX3397の有効性および安全性を明らかにする。また、PLX3397と従来の化学療法との併用療法の有効性および安全性を明らかにする。さらに、これらの効果がなぜ得られたかを、腫瘍微小環境に着目してフローサイトメトリーや免疫組織化学染色により評価する。これらの知見をもとに、実用化に向けたレジメンの構築を行い、どのタイミングで併用するのが最も強力な有効性が得られうるかを明らかにしていく。
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