研究課題/領域番号 |
21K16720
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
墳本 一郎 近畿大学, 医学部, 講師 (20770051)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 高血圧 / レニンアンジオテンシン系 / ARB / カルシウム拮抗薬 / 軟骨変性 / つくば高血圧マウス / 変形性関節症 / 高血圧症 / レニン・アンギオテンシン系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、レニン・アンギオテンシン系(RAS)を活性化させた遺伝子導入マウスである「つくば高血圧マウス」を用いて、高血圧症と変形性関節症(OA)発症との関連を病態学的に解明し、降圧剤の投与により、高血圧症患者におけるOA発症と進行を抑制することが可能かどうかを研究し検討します。
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研究実績の概要 |
【目的】本研究では強制走行負荷を行ってOAを誘発したつくば高血圧マウス(THM)に対して、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与を行うことでOAの進行を抑制可能かを検討することを目的とする。【方法】雄4週齢THMとC57/BL6マウス(WT)に降圧薬ARB群(オルメサルタン:0.075mg/日)、カルシウム拮抗薬(Ca-b)群(アムロジピン:0.125mg/日)、プラセボ群は蒸留水を連日腹腔内に4週間投与し血圧を測定した。降圧薬を4週間投与時点(8週齢)でと殺し、SafraninO・fastgreen染色を行い、OARSI scoreで軟骨変性を評価、また動物用μCTを用いてBV/TVで軟骨下骨の骨粗鬆化を評価した。【結果】降圧薬投与前の収縮期血圧(sBP)は、THM(145.2mmHg)、WT(111.6)で、THMで有意に血圧が高かった。降圧薬投与後のsBPは、THMのARB群(99.7)、Ca-b群(94.0)で、投与群で投与前と比較して有意に血圧低下を認めた。同様にWTのARB群(88.2)、Ca-b群(86.5)で、投与後はTHMと比較してsBPの有意差は認めなかった。8週齢時点でのOARSI scoreは、THMのARB群(0.33)、Ca-b群(0.25)、プラセボ群(0.33)、WTのARB群(0.33%)、Ca-b群(0.17)、プラセボ群(0.25)となり、OARSI scoreに有意差は認めなかった。同様にBV/TVは、THMのARB群(65.1%)、Ca-b群(63.5)、プラセボ群(64.0)、WTのARB群(65.4)、Ca-b群(63.8)、プラセボ群(64.3)となり、BV/TVも有意差は認めなかった。【考察】走行負荷開始前時点で、THMとWTの降圧薬投与群同士で血圧の有意差は認めず、軟骨変性と軟骨下骨の粗鬆化にも有意差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THMにARBとカルシウム拮抗薬を4週間投与により、8週齢THMとWTの血圧に有意差がないレベルに降圧効果を認めた。このことよりARBとカルシウム拮抗薬の投与量、投与方法、投与間隔に問題がないことが示された。 免疫組織化学的による検討で、サフラニンO・ファストグリーン染色によるOARSI score評価にて、8週齢時点のTHMとWTの軟骨変性に有意差がないことが確認できた。またμCTによるBV/TV評価にて、8週齢時点のTHMとWTの軟骨下骨の粗鬆化に有意差がないことが確認できた。このことより、走行負荷開始前の時点では、高血圧が軟骨変性、軟骨下骨粗鬆化にまだ影響していないことが示された。よって研究目的に沿って強制走行負荷を行って高血圧がOA誘発に与える影響、ARBを投与することでのOA進行抑制に与える影響を評価することが可能である。降圧薬を投与しない群では、負荷により、WTと比較してTHMで有意に軟骨変性の増悪を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、強制走行負荷を行ってOAの発症を誘発したTHMに対して、ARB投与を行うことで、そのOAの進行を抑制可能かどうかの検討を進める。予備実験では、強制走行負荷によりTHMではOAが有意に早く進行しており、変性軟骨細胞にレニンアンジオテンシ系(RAS)構成タンパク質の発現と軟骨肥大分化マーカーの発現に強い相関性を認めた。ex vivoでRASの主要受容体であるアンジオテンシⅡ1型受容体(AT1R)に周期的圧負荷を加えると軟骨細胞の肥大変性が有意に進行し、AT1R拮抗薬であるARBの投与で肥大変性が抑制された。このことよりAT1Rが機械的ストレスを受容することで、肥大変性が促進され、アンジオテンシンⅡが存在することで肥大変性が促進される可能性が示唆される。今回はIn vivoで走行負荷により局所RASが軟骨変性に及ぼす影響、ARB投与にて軟骨変性の進行を抑制できるかについて検討する。またRAS系の関与ではなく、高血圧自体が軟骨変性に影響を与えている可能性を除外するために、対照群としてカルシウム拮抗薬ACE阻害剤を用いた評価も検討を進めていく予定である。
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