研究課題/領域番号 |
21K16721
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石松 哲郎 福岡大学, 医学部, 助教 (20881957)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 変形性膝関節症 / 高位脛骨骨切り術 / 腓骨神経麻痺 / 運動誘発電位 / 神経麻痺 |
研究開始時の研究の概要 |
当初2年間で、変形性膝関節症に伴う有症状患者で、高位脛骨骨切り術を施行する40例を対象とする前向き研究を行う(1年毎に20例ずつ)。術中に運動誘発電位機器を用いて腓骨神経の電位を測定し、電位低下をきたす原因を解明し、併せてリスク因子の解析を行う。3年目には、論文の作成を行い、国内外の学会に研究発表をすることで、世界中に腓骨神経麻痺の予防法を提唱し、より安全な治療法を確立する。
|
研究実績の概要 |
変形性膝関節症に対する手術的治療法である、膝周囲骨切り術は元来の膝機能を温存し、かつ活動レベルを改善し得ることから、年間約8000例と増加傾向にあり、その必要性は明白となっている。しかし、術中合併症として約4%に重篤な腓骨神経麻痺を生じる懸念があり、患者、そして医療者の手術の決断を鈍らせる重い足枷となっている。原因として、腓骨神経近傍のいずれかの手術手技に伴う医原性損傷ではないかとの仮説が出るに留まり、未だその原因は不明である。そこで、本研究の目的は、膝周囲骨切り術後に発生する腓骨神経麻痺の病態を、Motor-Evoked Potential(MEP)を用いて、術中神経電位の計測を行うことにより解明し、併せて予防法を開発することである。 変形性膝関節症に対し、膝周囲骨切り術を施行した20例25膝を対象とし、MEPによる神経電位の検証を行った。MEPは、麻酔下に、刺激電極は頭蓋運動野に設置し、記録電極は腓骨神経支配筋の前脛骨筋・腓骨筋、並びにコントロールとして母指球筋に設置した。神経電位の測定は、術前、腓骨筋をレトラクタ―にて牽引直後、前脛骨筋をレトラクタ―にて牽引直後、閉創後に施行した。各測定間で腓骨神経と正中神経各々における電位差を比較した。また、術後筋力低下の有無についても評価を行った。 骨切りの際に、前脛骨筋を牽引した際に、腓骨神経の電位が90%の確率で有意に低下した。また、閉創後には神経電位は有意に回復を示し、術後に神経麻痺を生じた症例はいなかった。そのため、前脛骨筋の牽引こそが腓骨神経麻痺の原因であることを解明した。 その成果を、第2回Knee Osteotomy and Joint Preservation研究会にて発表し、最優秀演題賞を受賞した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形性膝関節症に対し、膝周囲骨切り術を施行した中において、25膝にMEPを実施可能であった。過去の研究を基に施行したPower analysisにおいて、25膝は十分な症例数であると判断し得た。結果として、有意差をもって、腓骨神経麻痺の原因が、前脛骨筋の牽引操作であることを証明した。また、MEPに基づき、電位低下をきたした症例と電位低下をきたさなかった症例について、単純X線やMRIを用いて、要因を調査した。両群の比較において、牽引される前脛骨筋の筋断面積ではなく、術前下肢アライメントに差があることが解明された。
|
今後の研究の推進方策 |
論文を作成し、海外Journalへ投稿中である。また、この知見を世に広めるため、2024年2月にアメリカで開催されたAAOS 2024 Annual Meeting (San Francisco, USA)で発表を行い、2024年5月に日本整形外科学会(福岡)、並びに、イタリアで開催されるESSKA 2024 (Milan, Italy)で発表の予定である。現時点において、研究計画の変更はない。
|