研究課題
若手研究
胎児は母体にとって父親由来抗原を発現する半異物であるが、妊娠中は父親抗原特異的な免疫応答の抑制(免疫寛容)が誘導されるため、胎児は拒絶されない。父親抗原特異的な免疫寛容の誘導には、母体の父親抗原特異的制御性T細胞(Treg)が重要な役割を果たす。母体高血圧・胎児胎盤循環不全を呈する妊娠高血圧腎症(PE)の発症には、抗原特異的Tregの機能障害が関与する。今回、単一細胞からT細胞受容体と網羅的mRNA発現の同時解析を行うことで、抗原特異的Tregに特徴的に発現する機能分子を明らかにする。これにより、抗原特異的Tregをターゲットとした治療薬選定に繋げる。
正常妊娠初期4例、正常妊娠後期3例、妊娠高血圧腎症(PE)3例の脱落膜CD4+T細胞をscRNAseqに供した。子宮内膜CD4陽性T細胞は、ナイーブ、濾胞性T細胞様、メモリー型、Th1/Th2中間型(7-Th1/Th2 int)、Th1、PRF+活性化型、FOXP3-Treg、Th17、FOXP3+Tregからなるヘテロな集団であった。クラスター毎の発現変動遺伝子解析では、PEでは妊娠後期に比べ、メモリーとTh1/Th2 intでT細胞活性化関連遺伝子の発現が上昇していた。さらに、PEでは、FOXP3+TregにおいてPDCD1をはじめとした疲弊関連遺伝子の発現が増加していた。
胎児は母体にとって半異物であるが妊娠が維持される。免疫応答を抑える働きを持つ制御性T細胞性のT細胞の働きも必要である。妊娠高血圧腎症(PE)では、両者のバランスの不均衡により胎盤に拒絶反応が生じることが指摘されていたが、詳細なメカニズムは不明であった。本研究では、ヒトのPEの子宮では、炎症性CD4+ T細胞の一部で活性化を示す遺伝子の発現が上昇し、Tregでは疲弊して働きが低下することを示す遺伝子発現が上昇することを発見した。治療標的となりうるT細胞分画と分子の候補が明らかとなり、新規免疫学的治療開発への展開が期待される。
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