研究課題/領域番号 |
21K16832
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大道 亮太郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (20771299)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | アデノ随伴ウイルス / 有毛細胞 / 遺伝性難聴 / 遺伝子治療 / 内耳 / 感音難聴 / 内耳遺伝子導入 / 遺伝子導入 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
感音難聴は最も一般的な神経疾患の1つである。その病因は多岐にわたるが、騒音や加齢の要因をのぞくとそのほとんどが遺伝性難聴とサイトメガロウイルス胎内感染による難聴である。遺伝性難聴は新生児のうち500人に1人に発症し、すべての先天性感音難聴患者の50-60%をしめる。遺伝性難聴に対する検査の進歩により、補聴器や人工内耳による治療介入が可能となっている中で、それらは対症療法の範囲を出ない。根治的治療手段として遺伝子治療の開発が重要である。本研究は内耳に対する遺伝子治療に欠かすことのできない遺伝子を細胞に運搬する新しい手段として、Dual Vector法を応用したモデルを開発する。
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研究実績の概要 |
これまでの検討で、蝸牛が成熟している生後4週目の野生型マウスに対し、Round window membrane + Canal fenestration法(以下RWM+CF法)で2種類のAdeno associated virus (以下AAV)を内耳に導入した。血清型タイプ2(以下AAV2)、血清型タイプ9(以下AAV9)を用い、それぞれのベクターには蛍光タンパクであるeGFP(緑色蛍光)とmCherry(赤色蛍光)を組み込んだ。その際の濃度は先行研究での濃度に合わせるように、各ベクター濃度はその半分の濃度とした。具体的な濃度は以下の通りである。AAV2- EGFP at 1.84 _ 10^12 GC/mL, AAV2-mCherry at 1.07 _ 10^12 GC/ mL, AAV9-EGFP at 1.2 _ 10^12 GC/mL, AAV9-mCherry at 1.24 _ 10^12 GC/mL。 注射後2週間目に聴性脳幹反応で聴力を評価したところ、注射された側の耳と対側の未治療の耳を比較し、低音域から高音域にかけて明らかな聴力低下を認めず、Dual transductionによる聴毒性は認めないと判断した。聴力を評価した後に安楽死させた上で、側頭骨を採取し、内耳を取り出し、固定した。免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡による内有毛細胞及び外有毛細胞への感染率を検討した。 AAV2同士の組み合わせでは内有毛細胞への導入効率は96.92%とsingleの場合と同様の高効率であった。外有毛細胞に対しては、ApexとMiddleにおいて90%以上の高効率を認めた一方で、Baseに関しては効率が低下しており、全体としては65.59%と他家の報告よりも高値ではあったが、singleの効率と比較すると低下を認めた。 AAV2によるDual transductionは有毛細胞においてsingleと同様に高率に導入されており、遺伝子治療における高い有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。2種類のAAV2をRWM+CF法で内耳内に注射し、遺伝子導入を試みた。注射後2週間目に聴力検査を施行し、同一個体で術側と非術側を比較したところ、明らかな聴力低下を認めなかった。AAV2を組み合わせたDual Transductionの有毛細胞への導入効率は、既報と比較しても最も高効率の導入結果を示した。次段階の検討として、その他AAV2とAAV9の組み合わせやAAV9同士などの導入効率について、同様に共焦点レーザー顕微鏡での観察などを行う予定である。以上の様に、当研究では、これまでに研究の目的にそった実験データがえられているので、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次段階の検討として、AAVにeGFPを2分割したものを組込み、RWM+CF法で内耳内に投与して、蝸牛感覚細胞内で蛋白質機能(蛍光)を発現するかどうかを示す。これによりDual Transductionされたものが真に分割された遺伝子を組み合わせて発現されられるかを判断できる見込みである。また、当研究のテーマである、マウス内耳への遺伝子ベクター投与法の研究をさらに発展させるため、アデノウイルスベクターだけでなく、その他の遺伝子ベクターを内耳に投与して、感覚細胞に導入されるかどうか検討する。これらの遺伝子ベクターを内耳へ投与して、その導入効率や聴力への影響を検討し、細胞障害を引き起こすことがないかどうか確認する。これにより次段階の研究計画の立案につなげる。
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