研究課題/領域番号 |
21K16834
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
勝見 さち代 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (60625565)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Cochlear Synaptopathy / 騒音性難聴マウスモデル / Bisphosphonate / 感音難聴 / Zoledronate / Hidden hearing loss |
研究開始時の研究の概要 |
騒音性難聴マウスモデル(in vivo)を用いて暴露後にZoledronateを投与し、cochlea synaptopathyの治療効果を生理学的・組織学的に検討し、さらに、薬物作用機序を分子生物学的に解析する。騒音前・後、治療後に聴覚検査により難聴を生理学的に評価する。2週間後蝸牛を採取し、内有毛細胞と求心性蝸牛神経とのシナプス変性を組織学的に評価する。ZoledronateのターゲットであるFPPSの内耳における発現を組織学的に検討し、FPPS作用点より下流の生成物(FPP、GGPP、GTPase等)の騒音、治療介入による変動を分子生物学的に検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、騒音性難聴マウスモデルを用いて、第二世代BisphosphonateのZoledronate(以下、Zol)の難聴改善効果につき、生理学的、組織学的に検討し、さらに、薬物作用機序について分子生物学的に解析し、Zolのドラッグ・リポジショニングの可能性を探ることである。騒音暴露後にZolもしくは同量のsalineを皮下投与し、暴露前・後、治療2週間後に、歪成分耳音響放射検査 (DPOAE)、聴性脳幹反応 (ABR) を測定し閾値変化とABR第I波を定量的に検討したところ、聴覚閾値に明らかな変化は認めなかったが、治療群においてI波の振幅が有意に改善し難聴への治療効果が示唆された。また、cochlear wholemountを作成し免疫染組織学的に解析したところ、Cochlear synaptopathyが治療により改善する傾向を認めた。 ZolはMevalonate PathwayのPyrophosphate Synthase (FPPS)と競合拮抗しFPP、GGPPの合成を低下させ神経軸索延長やシナプス形成に重症な細胞シグナル伝達に関わるタンパク質のプレニル化を阻害する。Zolの作用機序を明らかにするため、コルチ器におけるFPPSの発現を免疫組織染色にて検討し、蝸牛神経細胞に発現していることを確認し、騒音暴露前後での発現の変化を検討した。また、蝸牛軟部組織を採取しFPPSの発現をリアルタイムPCR、ウエスタンブロッティングにて検討した。さらに、蝸牛組織より得られるサンプル量は少量であるため、iMOP(Immortalized Multipotent Otic Progenitor Cells)を代替として検討したところ、FPPSの発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに、騒音性難聴モデルマウスを用いた聴力の生理学的評価を行い(n=9)、 聴覚閾値に変化はないが、ABRI波の振幅が治療群において有意に改善することを確認した。また、組織学的解析のため、蝸牛whole mountを作成し、抗Myo7a抗体(内有毛細胞の指標)、抗CtBP2 (C-terminal Binding Protein) 抗体(前シナプスの指標)、抗GluA2 (Glutamate receptor subunit A2) 抗体(後シナプスの指標)を用い免疫染色を行い共焦点顕微鏡で観察し、内有毛細胞あたりのpaired synapse ribbon数を定量的に評価したところ、治療群ではpaired synapse ribbonが保持され、Cochlear Synaptopathyへの治療効果が示唆されることを確認し、n=3から6へとサンプル数は増加した。 蝸牛における薬物作用機序を解析するため、Zolが競合拮抗するFPPSの蝸牛内における発現を免疫組織染色にて解析し、蝸牛神経節細胞に発現していることを確認し、騒音暴露前後・Zol治療群と非治療群とでの発現変化を検討しててきたが、再現性のある結果を示すためn数を追加し検討中である。また、蝸牛軟部組織を採取し、騒音暴露前後・Zol治療群と非治療群におけるFPPSの発現変化をリアルタイムPCRにて比較検討している。また、FPPS蛋白発現をウエスタンブロッティングにより評価を試みたが、抗体の最適化に時間を要した。蝸牛より得られるサンプル数はごく少量と制限があり、繰り返し実験の弊害となっており、代替手段を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
蝸牛における薬物作用機序を解析するため、Zolが競合拮抗するFPPSの蝸牛内における発現の騒音暴露前後・治療群、非治療群での変化を免疫組織染色にて検討しているが、動物数を重ねていく必要がある。 コルチ器におけるFPPSやFPPS作用点下流の生成物(Farnesyl Pyrophosphate: FPP、Geranyl-geranyl Pyrophosphate: GGPP)の騒音暴露前後やZol治療介入前後の発現の変化をリアルタイムPCR、ウェスタンブロッティングを用いて検討中であるが、今後も動物数を重ねていく必要がある。また、蝸牛より得られるサンプル数はごく少量であるため、代替としiMOP(Immortalized Multipotent Otic Progenitor Cells)を検討し、分化誘導した神経細胞内にFPPSの発現を確認した。今後iMOP細胞を用いた実験を発展させ、騒音障害を模したiMOP細胞障害モデルを確立し、リアルタイムPCR、ウェスタンブロッティングにてFPPS、FPP、GGPPの変化を検討していく。
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