研究課題
若手研究
頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のHPV(-)組織では、受容体チロシンキナーゼ(RTK)のEGFR/ERBB2またはEGFR1/3の変異が最も多い。またその下流のHRAS、PI3CA、PTENの変異が存在し、RTK/RAS/PI3K経路がHNSCCの発がんに関与している。一方腫瘍抑制因子であるTrp53が84%で変異していることが知られている。本研究では、我々が同定した新規がん抑制遺伝子PP6に注目し、KRAS(G12D)を持ちTrp53をホモ欠損したマウスの舌におけるPP6のがん抑制機能の詳細を解析する。
マウスの舌で、K-rasG12D発現に加えてPP6ホスファターゼ遺伝子(Ppp6c)を欠損させると早期に上皮内癌が発症し約2週間で安楽死処置となった。一方でK-rasG12D発現のみでPpp6cが正常の場合はほとんど野生型の舌と区別がつかなかった。K-rasG12D+Ppp6c欠損の腫瘍組織においては、ERK-ELK-FOS axis、AKT-4EBP1 axis、 AKT-FOXO-CyclinD1の活性化が認められた。また、γH2AXの蓄積とNFkB経路の活性化が認められた。マウス舌において、PP6の機能不全は、KRAS(G12D)依存的腫瘍化を強く増強させることを明らかにした。
現在のところ、がん原性RASによって発生したがんの治療法として、数多くの抗RAS試薬が提案されているが、決定的な治療法はまだ確立されていない。今回、我々は、PP6ホスファターゼが変異型RASによりドライブされるERK、AKT、NFkBの異常な活性化を抑制することで、腫瘍抑制因子として機能していることを発見した。現在、世界中でホスファターゼの活性化物質のスクリーニングが行われている。将来的には、PP6 活性化因子が、変異型RASによる発がんを抑える新しい治療戦略となりうるのではないかと考える。
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Cancer Sci.
巻: 印刷中 号: 5 ページ: 1613-1624
10.1111/cas.15315