研究課題/領域番号 |
21K16944
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
齊藤 聡 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (40732996)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳卒中 / う蝕 / 治療 / 微小出血 / 脳出血 / 齲蝕原性細菌 / 認知症 |
研究開始時の研究の概要 |
齲蝕原性細菌であるStreptococcus mutansは, 脳卒中や認知症との関連で近年大きな注目を集めている. S. mutansは通常, 軟組織には結合し得ない. しかし, Cnmタンパクを発現するS. mutansは, 象牙質を構成する1型コラーゲンや血管中膜の基底膜を構成する4型コラーゲンへの結合能を有する. 申請者らは, このCnm陽性S. mutansの口腔内感染が, 脳深部の微小出血発症の重大なリスクとなることを世界に先駆けて示してきた (Stroke 2020). 本研究課題では, ゲノムに注目し, Cnm陽性S. mutansに対する治療薬の開発を目指す.
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研究実績の概要 |
脳微小出血は脳卒中患者の長期予後に影響を及ぼす。コラーゲン結合蛋白Cnmを発現するStreptococcus mutansは、脳血管の炎症を誘発し、血液脳関門の完全性を損ない、脳出血の原因となる。これまでCnm陽性S. mutansと脳深部の微小出血の関係が示されてきたが、脳表の微小出血との関連は示されてこなかった。脳表の微小出血は、脳深部の微小出血に比して、より密接に認知症と関連する。本研究では、Cnm陽性S. mutansと脳微小出血、特に脳表の微小出血との関連について検討した。 本研究では、Cnm陽性またはCnm陰性のS. mutansの保菌をPCRで評価した。Cnm陽性S. mutansと脳微小出血の数、特に10個以上の脳微小出血の存在との関連を検討した。多変量解析では、脳微小出血に関連する、年齢、性別、高血圧、脳卒中の病型、NIHSSスコア、脳アミロイド血管症で調整した。 本研究では、326人のS.mutans保菌患者を対象とした。画像データのない4名の患者を除外し、72人のCnm陽性S. mutans保菌患者と250人のCnm陰性のS. mutans保菌患者で比較した。Cnm陽性S. mutansの保菌は、10個以上の脳微小出血の存在と関連し (調整後オッズ比: 2.20 [1.18-4.10])、深部微小出血および脳表微小出血の数と独立して関連していた(調整後リスク比, 深部微小出血: 1.61 [1.14-2.27], 脳表微小出血: 5.14 [2.78-9.51])。以上の研究より、口腔内のCnm陽性S. mutansが脳深部の微小出血のみならず、脳表の微小出血とも関連することが世界で示された。また、口腔内のCnm陽性S. mutansを減少させることが、脳卒中や認知症の新しい治療法/予防法として有用である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果が、本年度European Journal of Neurology (IF:6.288)に掲載された。そのため概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Cnm陽性S. mutansと微小出血の関連について、現在遂行中の多施設共同前向き観察研究で評価するとともに、そのメカニズムについて基礎研究で検討する。また、現在歯磨き粉を用いたCnm陽性S. mutansの治療の可能性について検討中である。治験のデザインのための基盤データつまり、Cnm陽性S. mutans保菌患者の自然歴は、現在遂行中の多施設共同前向き観察研究から2023年度中に明らかになる。COVID-19の感染も収束し、いよいよ海外との共同研究も可能となる。2023年度は治療薬開発に向け、臨床試験のプロトコール作成にも着手する予定である。
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