研究課題
若手研究
先行研究でアメロジェニンが核内移行しヒストン修飾を誘導することで、マクロファージによる抗原提示を抑制することを初めて見出した。しかし、アメロジェニンが核内に移行した後、どのようなエピジェネティック制御を介して免疫抑制と創傷治癒を促進するのかは不明である。本研究はアメロジェニンが免疫応答や創傷治癒等に与える影響、および分子メカニズムを解明するため、アメロジェニンの核内移行後のヒストン修飾における作用点の解明、また人為的にアメロジェニンの活性増強が可否を検証する。さらにこれらの結果より、アメロジェニンの投与による新しい歯周組織再生療法の開発と共に、難治性疾患の新規治療確立に向け研究の展開を図る。
先行研究にてアメロジェニン(rM180)がマクロファージ核内に取り込まれた後,MHCクラスⅡの発現を抑制し,抗原提示能を低下させることを報告した。本研究ではマウス間で他家皮膚移植を行う目的で,B6マウスから採取した皮膚にrM180を塗布しBALB/cマウスに移植した結果,PBS塗布対照群と比較して移植片の生存期間が6日間延長し,移植片壊死面積も減少した。皮膚組織像では対照群で著しい炎症性細胞浸潤が確認されたが,rM180塗布群では免疫細胞数とMHC Ⅱ+細胞数が有意に減少した。以上の結果から,将来的にアメロジェニンが臓器移植医療の場などで免疫抑制剤として応用できる可能性が示唆された。
元来歯のエナメル質の石灰化と成熟にのみ関与するはずのアメロジェニンが免疫抑制作用を有するという現象は、歯の発生時に特殊な免疫システムが作動している可能性を示唆するものであり、発生期の歯胚防御の分子機序を解明する研究の発端となるかもしれない。さらに、使用したアメロジェニンは組み換え蛋白質であり、プリオン等の未知の病原蛋白質を含まないため、生体に安全に使用できる。昨今の免疫抑制剤には重篤な副作用が認められるものが多数確認されており、将来的にアメロジェニンが臓器移植を始め、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチなどのMHC II関連自己免疫疾患に対する安全な免疫抑制剤として応用できる可能性がある。
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