研究課題
若手研究
本研究の目的は、多人数の高齢者を対象に調査を行い、追跡調査から得られたデータを用いて、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能といった口腔機能ごとの低下に関連する因子を探索するとともに、性別、年代、歯数別の関連因子の違いや低下パターンの違いを検討することである。
対象者は、SONIC研究に参加した72~74歳の864人のうち、追跡調査を受けた488人とした。参加者は、左右の小臼歯部、大臼歯部での咬合支持の数により3群に分けられた。咬合支持と咀嚼能力との関連について、線形混合効果モデルを用いて縦断的に分析した。その結果、性別、咬合力、補綴されていない欠損歯数、加齢、および臼歯部咬合支持の変化が咀嚼能力と有意に関連していた。さらに、臼歯部咬合支持の変化と加齢の交互作用項は、咀嚼能力低下の有意な説明変数であった。この結果により、臼歯部咬合支持の喪失が咀嚼能力低下の主な要因であることを示された。
咬合支持の喪失は、咀嚼能力の低下に関連すると考えられている。しかしながら、これまでの先行研究は、横断的研究に基づくものであった。そこで、本研究では、地域在住の高齢者の咬合支持の変化と咀嚼能力との関連を縦断的に検討した。その結果、臼歯部咬合支持の喪失は、咀嚼能力低下に関連することが明らかとなり、高齢者の咀嚼能力維持には、臼歯部咬合支持の喪失予防が重要であることが示唆された。臼歯部咬合支持を維持することは、食物摂取の多様性と栄養状態の維持に寄与し、高齢者のQOLを向上させると考えられる。歯科医療従事者は、臼歯部咬合咬合支持崩壊のリスクを評価するために、歯の状態を注意深く検査する必要がある。
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