研究課題
若手研究
本研究の目的は、多人数の高齢者を対象に調査を行い、追跡調査から得られたデータを用いて、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能といった口腔機能ごとの低下に関連する因子を探索するとともに、性別、年代、歯数別の関連因子の違いや低下パターンの違いを検討することである。
2019年度国民生活基礎調査によれば、「かみにくい」有訴者は、70歳以降に急速に増加することが報告されている。かみにくさの自覚は、食品摂取の多様性を損なう可能性があるが、どのような人がかみにくさを自覚するのかについて報告した研究はあまりみられない。そこで本研究では、70歳、80歳の高齢者を対象に、食品のかみにくさ自覚に関連する因子を明らかにすることを目的とした。SONIC研究に参加した69-71歳829名、79-81歳825名の地域高齢者1654名を対象とした。食品摂取の主観的評価には、ごはん、リンゴ、牛肉、堅焼きせんべいについて、「食べたことがない」「嫌いだから食べない」「食べられない」「困難だが食べられる」「小さくすれば食べられる」「普通に食べられる」の6件法にて回答を得た。「食べたことがない」「嫌いだから食べない」を除外し、食品のかみにくさ自覚を2群(自覚あり:食べられない、困難だが食べられる、自覚なし:小さくすれば食べられる、普通に食べられる)に分類した。統計学的分析として、性別、年齢群、教育歴、経済状況、喫煙・飲酒習慣、残存歯数、咬合力、刺激時唾液分泌速度、認知機能、既往歴(がん、脳卒中)、握力、うつ傾向を説明変数、食品それぞれのかみにくさの自覚を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。食品ごとのかみにくさを自覚する者は、ごはん19名(1.1%)、リンゴ35名(2.1%)、牛肉77名(4.7%)、堅焼きせんべい204名(12.3%)であった。ロジスティック回帰分析の結果、ごはんとリンゴでは、咬合力とうつ傾向、牛肉と堅焼きせんべいでは、残存歯数と咬合力、うつ傾向がそれぞれかみにくさの自覚に関連を認めた。本研究の結果、かみにくさの自覚には、残存歯数や咬合力の口腔因子に加え、うつ傾向といった精神的な状態が関連していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
COVID2019の影響で参加者数が予定よりもやや少ないが、データの整理、分析順調である。
次年度も、今年度同様、参加者の確保、データ整理、分析を遅滞なく進める。
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Journal of Dentistry
巻: - ページ: 104088-104088
10.1016/j.jdent.2022.104088
Journal of the American Geriatrics Society
巻: 70 号: 2 ページ: 541-548
10.1111/jgs.17535