研究課題/領域番号 |
21K17080
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
梶本 昇 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (30824213)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | レジンセメント / 接着 / 脱着 / 近赤外線 / マイクロ波 / 歯科用セメント / イオン液体 / 熱膨張マイクロカプセル |
研究開始時の研究の概要 |
歯科臨床において補綴物の脱着が必要な場合があるが,接着層を物理的に破壊する方法しかなく,歯牙の損傷や歯周組織への負担が避けられない。任意に補綴物の脱着を誘起する技術が望まれているが,そのようなスマートな脱着技術は未だ実用化できていない。 本研究では,「マイクロ波照射で加熱可能なイオン液体」を「熱により膨張する粒子 (熱膨張粒子)」とともに歯科用セメントと複合化し,マイクロ波照射で脱着を誘起する歯科用セメントを創製することを目的とする。また,臨床モデルを用いて,マイクロ波を接着層のみに選択的に吸収させる照射条件を検証し,周囲組織や補綴物に影響を与えない脱着技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度の結果から,接着強さを低下させるために照射する電磁波の周波数を2450 MHz(マイクロ波域)から300 THz(近赤外線域)付近に変更し,実験を行った。 まず,熱源である炭化ケイ素(SiC)と近赤外線の発熱特性を調査した。SiCのみを添加したMMA系レジンセメント硬化体(2×2×2 mm)に近赤外線(center wavelength: 976 nm, power: 500 mW, Continuous Wave condition)を照射して検討したところ,SiC添加量が5 mass%で発熱による到達温度が最大となった。また,SiCのみを添加したMMA系レジンセメントでウシ象牙質とCAD/CAM用コンポジットレジンブロックを接着し,微小引張強さ(μTBS)試験を行ったところ,SiCを5 mass%添加してもμTBSは変化しなかった。この結果を元に,SiC添加量を5 mass%に絞った。続いて,SiC添加量を5 mass%に固定して,熱膨張マイクロカプセル(F-36,松本油脂製薬,以下,TC)の最適な添加量をμTBS試験で検討した。その結果,TCが20-40 mass%の組成では1 mmの距離から30秒の近赤外線照射によりμTBSが有意に低下した。μTBS試験後のセメント破断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ,近赤外線照射によりセメントの構造がスポンジ様に変化していることが観察され,セメントの構造が近赤外線照射により壊れやすい構造に変化したことが推測された。 本結果により,in vitroではあるが,近赤外線照射により任意にレジンセメントの接着強さを低下させることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画のマイクロ波域の電磁波の照射で接着強さを低下させることはできなかった。しかしながら,周波数を変えた近赤外線域の電磁波を利用することで,ウシ象牙質とCADCAMレジンブロックを用いた微小引張強さ試験において接着強さを低下させることができた。本研究の主目的は接着後に任意に脱着を可能にするという点にある。計画していたマイクロ波照射では接着強さを低下させることができなかったが,周波数帯の違う電磁波の近赤外線照射によって主目的を達成できていることから,研究データの内容に関しては十分なものが得られたといえる。 しかしながら,予定していた論文投稿が年度末に間に合わず,研究スケジュールに関しては「遅れている」といえる。遅れた理由としては所属大学が所持している走査型電子顕微鏡の故障が大きな要因である。 したがって,研究内容および研究スケジュールを総合して「やや遅れている。」という区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本科研費で得られた成果に関する論文を投稿する予定である。 具体的には,論文の投稿に向けたデータの再現性確認やn数を増やすための追実験,また,データの取りまとめを行ったのち,論文を投稿し,今年度中のアクセプトを目指す。
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