研究課題/領域番号 |
21K17102
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
竹澤 晴香 (山口晴香) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (00756942)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | リポソーム / Affibody / 光免疫療法 / IR700Dye / DDS / EGFR |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、多機能性リポソーム製剤による口腔癌に対する新たなドラッグデリバリ-システム(DDS) の開発である。本研究で作製する多機能性リポソーム製剤は、抗がん剤であるシスプラチンを内包し、表面に癌細胞特異的な抗体小分子(Affibody) と光感受性物質(IR700) の結合体を修飾する。多機能性リポソーム製剤は、癌細胞に特異的に取り込まれ、近赤外光の照射によって、リポソームに内包された薬物を変性させずに細胞質内に拡散させることが出来るなどの特徴がある。多機能性リポソーム製剤は従来のリポソーム製剤における課題を解決し、より効果的なDDSを実現する画期的な癌治療法となる。
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研究実績の概要 |
近年注目される、リポソームによるドラッグデリバリーシステムについての研究である。生体成分を構成するリン脂質を主成分とするリポソームは、様々な薬物を封入することが出来る。このリポソーム製剤は、癌組織の内部に新生された未成熟な血管にある隙間を利用して癌組織に到達し集積する。集積後、リポソーム製剤はエンドサイトーシスによって癌細胞内に取り込まれて代謝され、薬物を細胞質内に拡散させる。しかし、現行のリポソーム製剤は分子標的薬と比較すると特異性に欠けるなどの問題がある。本研究ではリポソームに、抗体小分子と光感受性物質の結合体を付加することで、光免疫療法の機能を備えた多機能性リポソーム製剤を開発し、より効果的で特異的な癌治療を実現することを目指す。 当該年度は、当初の研究計画で予定していた項目① 多機能性リポソーム製剤を作製、② 薬物放出の確認、③ 多機能性リポソーム製剤の癌細胞への特異的な取り込み確認、④ 細胞内での薬物拡散を確認、⑤ 光免疫療法の成功まで達成した。しかし、長期に多機能性リポソーム製剤を保存すると徐々に漏れが生じ、効果が出づらくなることが判明した。一方で、リポソームに付加している抗体小分子と光感受性物質の結合体のみで治療を行うと効率的な治療効果を発揮し、動物実験でも良好な結果を得た。抗体小分子と光感受性物質の結合体を用いた光免疫療法の効果は証明されたため、これが付加されるリポソーム側の問題が解決されれば次のステップに進めると考える。 当該年度は動物実験に移行する予定であったが、長期保存すると漏れが生じるという不安定な性質は生体内でも問題になると考えられたので、3Rの観点からも実験を行うには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長期に多機能性リポソーム製剤を保存すると徐々に漏れが生じ、効果が出づらくなることが判明したため。リポソーム内に封入した薬物がターゲット腫瘍に直接結合して効果を発揮することで、副作用を最小限にして治療効率を上げることが目的であるが、漏れが生じる不安定な状態ではこの目的を達することが出来ない。リポソームからの漏れを防ぐために封入の方法を工夫しているため動物実験には移行出来ず、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まずリポソームについて、どれくらいの時間でどの程度漏れてくるのか、また、温度変化による漏れへの影響があるかなどを確認する。その後、リポソームからの漏れを防止するために、リポソームの表面電荷を計測し、電荷と漏れの関係を検討する。リポソーム表面に抗体小分子と光感受性物質を付加した時の電荷によって漏れが起こっているようであれば、正電荷のアミノ酸を付与にすることによって漏れが防げるという報告もあるため、このような物質をさらに付加させて漏れを防ぐことが出来るかもしれない。さらに、ミリスチルアルコールなどの膜補助成分を添加物としてリポソーム内に入れ漏出を防ぐことも検討する。漏出の課題が解消され次第、動物実験へと移行する予定である。 多機能性を保った、人体に害のないリポソーム製剤が生体内で安定して腫瘍までたどり着くことを目指し、この性質を確立するべく検討を続ける。
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