研究課題/領域番号 |
21K17132
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝哉 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (00880650)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 非コードRNA / 末梢神経 / シュワン細胞 / H19 / ウイルスベクター / 長鎖非コードRNA / H19 / 神経炎症 / レンチウイルスベクター / 一次感覚神経 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、長鎖非コードRNAが機能性RNAとして様々な遺伝子の発現制御に深く関わることが明らかにされてきたが、疼痛疾患における解析はあまり進んでいない。神経損傷後のシュワン細胞で、lncRNAの一種であるH19の発現が持続的かつ劇的に上昇することが分かっている。H19は様々な炎症性サイトカインの産生に関与するという報告がある一方で、シュワン細胞は炎症性物質を介して末梢感覚神経の感作により神経障害性疼痛を誘発する。本研究では、H19がシュワン細胞による神経炎症誘導の主要制御因子として機能するとの仮説を検証し、その分子機構を基づいて核酸医薬を設計し、神経障害性疼痛の新規治療戦略の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
体性感覚神経の障害に伴う神経障害性疼痛は、特に歯科麻酔領域においては三叉神経痛や 舌咽神経痛などが挙げられるが、慢性に経過し難治性で苦痛が強いため、積極的に治療する ことが求められる。近年では、神経障害性疼痛の病態生理において、末梢神経系における神経炎症の重要性が言われている。末梢神経系のグリア細胞であるシュワン細胞も炎症性サイトカインや神経栄養因子などの様々な液性因子を産生・放出することで末梢感覚神経の感作を引き起こすとされていて、シュワン細胞においてこれらの炎症性物質が協調して調節されていることが知られている。長鎖非コードRNAであるH19は様々な作動原理を通して炎症性疾患に関連し、これまでに様々な細胞腫において多くの液性因子の発現調節を担うことが報告されている。しかし、H19は幅広く炎症性物質の制御に関わるにもかかわらず、標的遺伝子の発現調節機構は個別にしか検討されていなかった。最近、申請者らは、H19がシュワン細胞で神経障害により持続的に且つ劇的に増加していることを明らかにし、更にそのシュワン細胞にレンチウイルスベクターを使用して、H19を効率的に遺伝子導入できる手法を確立した。現在、遺伝子導入を行ったシュワン細胞株に対してRNAシーケンスを行い、発現変化する遺伝子群を同定した。さらに、これらの遺伝子群から神経炎症に関わる遺伝子をバイオインフォマティクス解析から抽出した。標的遺伝子は同定できたが、効果的にH19を特異的に遺伝子抑制するsiRNAの配列がラットで同定できなかったため、今後の実験は動物種をマウスに変更して実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットのH19のsiRNAの効果的な配列が同定できず、動物種をマウスに変更して神経障害性疼痛モデルの検証からやり直しているため。マウスのsiRNAの配列は既に先行報告にあるものを使用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性疼痛モデルのマウスを作製し、行動を評価する予定である。その後、既に報告されているH19のsiRNAの配列を使用し、マウスのシュワン細胞株でH19の発現を効果的に抑制できるか検証を行う。既にRNAシーケンスにより、H19の下流候補遺伝子の同定は済んでいるため、H19の遺伝子導入、siRNAによる発現抑制したそれぞれのマウスの末梢神経にてその候補遺伝子の発現を調べる予定である。これらの解析から炎症制御への関与を見出したH19結合分子に関して、H19への結合を阻害するH19アンチセンス核酸により初代培養シュワン細胞を処理し、炎症性物質の遺伝子発現を測定することで治療候補となる核酸配列を同定する。同定後は、神経障害性疼痛モデルマウスへ、そのアンチセンス核酸を投与し、疼痛抑制効果を行動学的に確認する。
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