研究課題/領域番号 |
21K17204
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
河村 佳穂里 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (20737019)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 口腔がん / 分子標的治療薬 / 医療費 / 口腔癌 / 費用対効果 / QOL / 新規抗がん薬剤 |
研究開始時の研究の概要 |
近年新規抗がん薬剤としてセツキシマブとニボルマブが口腔癌へ適応拡大された。化学療法のレジメン数が増加し、患者ごとに適した治療選択が可能となり予後の向上が期待される中、国民医療費は増大し続けており、医療の質と費用対効果を高めるためにエビデンスに基づいた医療政策が重要視されてきている。本研究では、医療ビッグデータをもとに口腔癌患者の新規抗がん薬剤の治療実態と長期予後を記述するとともに、実際の口腔癌患者から、医療費やQOLなどの調査を行う。これらの結果から口腔癌の治療選択を行う上で医療経済学的な観点から最適な医療を提供する一助になる知見を見出す。
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研究実績の概要 |
近年新規抗がん薬剤としてセツキシマブとニボルマブが口腔癌へ適応拡大された。化学療法のレジメン数が増加し、患者ごとに適した治療選択が可能となり予後の向上が期待される中、国民医療費は増大し続けており、医療の質と費用対効果を高めるためにエビデンスに基づいた医療政策が重要視されてきている。 本研究では、まず大規模診療報酬請求情報データベースをもとに口腔がん患者の治療実態と長期予後を記述し、医療費について調査した。株式会社日本医療データセンター(JMDC)のレセプトデータを用いて2005年1月から2020年12月までに口腔・咽頭がん(ICD-10コードC00-C14)の病名がついた患者を対象とした。適格基準は、観察開始から6ヶ月以上経過した後に口腔・咽頭がんの診断を受けている患者、手術、放射線治療、化学療法のうち少なくとも1つの治療を受けている患者、除外基準は、口腔・咽頭がんの疑い病名のみの患者、口腔・咽頭がんの診断前に他部位のがんの診断を受けている患者とした。口腔・咽頭がんの診断後に他部位のがん(ICD-10コードC15-C73)の病名がついたことをSecondary primary cancers(SPCs)発症の定義とした。 口腔・咽頭がん患者21,736名のうち、1,633名が解析対象者となった。性差は男性が72.4%と多く、年齢では55から64歳が37.0%と最も多かった。対象者のうち388名がSPCsを発症した(発症率、8.0/1,000人月)。初発がんの部位別の発症率は下咽頭が最も多く、歯肉、口蓋であり、耳下腺が最も低かった。SPCsの発生部位は、食道が最も多く、次いで肺、喉頭であった。多変量解析の結果、年齢(≧55歳)、化学療法や放射線療法を行っていること、また口腔底、歯肉、下咽頭に発症した口腔・咽頭がんは、SPCsの発生リスクが増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔がん患者の治療実態および口腔がん治療後の予後を明らかにするとともに、医療費の解析を行うにあたって、二次原発がんを発症するリスクについて着目した。SPCsを有する患者の生存率は低く、特に食道、肺のSPCs発症は予後不良であるとされている。 またSPCsは患者の生存率に大きく関わるため、早期発見、早期治療が重要である。本研究は健康保険組合のレセプトデータを用いた研究であるため、口腔・咽頭がんの重症度、飲酒、喫煙に関する情報が含まれていないこと、また高齢者が少ないことなど今後配慮すべき点は多く存在するが、口腔・咽頭がん患者の長期的なフォローアップによる口腔・咽頭がんのSPCsの発生およびその関連因子の検討により、口腔・咽頭がんの患者の治療後の予後予測のための基礎資料として有用であると考えられる。 本年度の解析結果によって、SPCs発症のリスクを明らかにすることはできたものの、まだ口腔がんの治療実態として分子標的治療薬を用いた医療費の解析が不十分であったこと、また患者の予後収集が不十分であるため、文献調査からデータ収集を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は大規模診療報酬請求データベースを用いて、口腔がんに対する治療実態と口腔がん治療後の予後についての解析を行った。引き続き同データベースを用いて、治療にかかる医療費の解析を行うとともに患者のQOLに関する情報を文献調査により収集し、従来の化学療法と新規抗がん薬剤との費用対効果分析を行う。
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