研究課題/領域番号 |
21K17219
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
長瀬 春奈 朝日大学, 歯学部, 助教 (40888799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 唾液分泌不全 / 低分子量Gタンパク質Cdc42 / 涙液増加 / RNAシーケンス / 唾液腺 / 涙腺 / 外分泌 / RNAシーケンス解析 / RNA-Seq解析 / Cdc42 |
研究開始時の研究の概要 |
唾液腺の萎縮に伴う唾液分泌機能の低下は、むし歯を引き起こし、噛む・飲み込む機能も低下させるため、唾液分泌機能の維持に向けた研究が社会的に求められている。 申請者は老化した唾液腺の状態を模倣するため、遺伝子操作により唾液腺や涙腺が萎縮するマウスを作製した。このマウスの外分泌能を解析したところ、唾液分泌量が低下する一方で、涙液の分泌量は維持 (むしろ増加) することが明らかとなった。本研究では、分泌能を失う唾液腺と分泌能を維持する涙腺を比較することで、外分泌能の維持に関わる新たな分子標的を発見することを目的とした研究である。
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研究実績の概要 |
唾液腺萎縮に伴う唾液分泌機能の低下は、う蝕や咀嚼・嚥下機能低下を引き起こすため、唾液分泌機能の維持に向けた研究が社会的に求められている。申請者は、上皮細胞の形成に必須である低分子量Gタンパク質Cdc42を成体マウスの腺房細胞特異的に欠損し、唾液腺、涙腺、膵外分泌腺等の外分泌腺が萎縮するマウスを作製した。このマウスの唾液分泌量は著しく低下する一方で、涙液分泌量は増加傾向であった。本研究では、分泌能を失う唾液腺と分泌能を維持する涙腺を比較することで、外分泌能の維持に関わる新たな因子を発見することを目的する。 令和4年度は、RNAシーケンスデータから、fold-change(FC)比(Cdc42cKO群/対照群)が涙腺と耳下腺において、逆の挙動を示す因子を抽出した。加えて、水分泌に重要である水チャネルAQP5の性状を両腺で比較検討した。FC比が涙腺で増加し、且つ、耳下腺で-2以下減少する因子を15遺伝子抽出した。反対に、涙腺で減少し、且つ、耳下腺で2以上増加する因子を21遺伝子抽出した。これらは、細胞周期、細胞死、細胞骨格形成、神経伝達などに関わる遺伝子であった。また、詳しい機能が知られていない遺伝子やlncRNAも抽出された。Aqp5は抽出した遺伝子には含まれなかったものの、分泌結果と一致した方向に変動していたため、その性状を評価した。Aqp5 mRNA発現量はCdc42cKO群と対照群間で有意な差は認められなかった。一方で、AQP5タンパク質発現量は水分泌の変化に一致し、耳下腺cKO群で減少し、反対に涙腺cKO群で増加することが明らかになった。さらに、両腺の腺房細胞においてアポトーシス性の細胞死が増加する一方で、残留する腺房におけるAQP5の局在は変化せず、腺腔側膜上であることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
涙液分泌が増加し、反対に唾液分泌が減少した理由の一つして、腺房細胞におけるAQP5発現量の増減を示唆する結果を得られた点、RNAシーケンスデータから涙腺と耳下腺で反対の挙動を示す複数の候補因子をリストアップできた点で、おおむね順調な進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度内にRNAシーケンスの涙腺と耳下腺の比較解析から候補となる因子をリストアップしたため、令和5年度は候補因子のmRNA発現量をqPCRにより定量し、シーケンスデータと一致するかどうか検討する。有意な差が得られた因子の性状解析を行い、涙液および唾液分泌を制御するか検討する。
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