研究課題
若手研究
人口減少社会を迎えるわが国において,指導的地位に女性が占める割合の増加が期待されて久しいが,中高年女性の労働能力の著明な低下をもたらす更年期障害への対策は十分ではない.その背景には,全女性の半数以上が経験するcommon diseaseであるにも関わらず,確立した予防法が存在しないことや,非常に多彩かつ主観的な症状に対して,実地臨床における客観的指標が欠如しているといった課題が挙げられる.本研究では,地域在住者を対象とした大規模コホートのオミックスデータを活用し,更年期障害の予防や早期介入を検討する際の有益な医学的知見を得ることを目的とする.
地域在住者コホート研究のデータを用いて、中高年女性に好発する更年期障害の危険因子及びバイオマーカーの探索を行った。成果として、遺伝と環境の双方の影響を反映する代謝物のプロファイルが50歳前後で急激に変化すること、またそれらの血中濃度データを用いることで、一定の精度で更年期障害の有無が判別可能である可能性が示された。また、初回調査時に更年期障害を認めず、約5年間の追跡期間中に更年期障害を発症し得る40-60歳の女性を対象に危険因子を検討した結果、飲酒・不眠・不安といった因子の他、仕事のコントロール度が低いことや努力報酬不均衡が、就労女性における更年期障害発症に関与している可能性が示された。
指導的地位に女性が占める割合の増加が期待されている中、中高年女性の労働生産性に影響をもたらす更年期障害の予防や早期介入に関する対策は十分ではない.本研究により、働くの更年期障害の発症には、労働環境・生活習慣・心理社会的因子が複合的に関与している可能性が示され、包括的なアプローチの重要性がうかがえた。一方、更年期障害の診断に有用な客観的指標については、十分な対象者数ではなかったものの代謝プロファイル全体の変化が確認された。今後大規模な女性健康研究を可能とするデータベースの確立を期待したい。
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産婦人科の実際
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Maturitas
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