研究課題/領域番号 |
21K17489
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小宅 一彰 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (90803289)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 起立性低血圧 / 平均血圧 / 心拍出量 / 総末梢血管抵抗 / 心拍変動 / 圧迫療法 / 脳血管障害 / リハビリテーション / 血圧 / 自律神経機能 / 脳卒中 / 自律神経 / 循環機能 |
研究開始時の研究の概要 |
脳卒中リハビリテーションでは、活動再建に加えて再発予防を見据えた介入も必要である。起立時に低血圧をきたす起立性低血圧は、脳卒中の再発を引き起こす可能性が報告されている。しかし、脳卒中患者において起立性低血圧が生じる原因については不明な点が多く、リハビリテーションで治療の対象とすべき問題点は特定されていない。そこで本研究では、脳卒中患者における起立性低血圧の治療ターゲットとなる原因メカニズムの解明を目指す。本研究では血圧調節を担う身体機能を包括的に評価し、低血圧に関連する問題を特定する。さら低血圧の回復過程を評価することで、血圧低下が改善する機序の解明にも踏み込む。
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研究実績の概要 |
脳卒中患者の起立時の血圧変化に関連する生理学的機序に関する研究、令和3年度~4年度の研究成果を応用した起立性低血圧の評価に関する研究、そして当初の計画では令和7年度に実施予定の起立性低血圧に対する治療介入に関連する研究に取り組んだ。 起立性低血圧の生理学的機序に関する研究については、これまでに脳卒中患者21名分のデータを取得し、横断的に解析した。その結果、21名中7名に起立性低血圧を認めた。また、起立時の平均血圧の変化には、心拍出量と総末梢血管抵抗のどちらの変化が強く関連するかを解析した結果、平均血圧の低下は総末梢血管抵抗の減少と強く関連することが明らかになった。ただし、起立性低血圧を認めた7名の起立時の血行動態を個別に解析すると、7名中5名は起立に伴い心拍出量の増加と総末梢血管抵抗の減少を認めたが、残りの1名は心拍出量と総末梢血管抵抗の両方の減少、もう1名は心拍出量の減少と総末梢血管抵抗の増加を認めた。 起立性低血圧の評価に関する研究では、令和4年度に開発したSit-up試験を用いて地域在住高齢者102名を対象とした起立性低血圧の評価を行った。その結果、34名に起立性低血圧を認め、また起立性低血圧の存在は、終末糖化産物の多さやプレフレイル・フレイル状態と関連することが明らかになった。本研究の成果は、脳卒中患者の予後予測にSit-up試験を応用するうえでの基礎的知見として意義がある。 さらに起立性低血圧の治療介入として臨床現場で広く用いられている下半身への圧迫療法が、自律神経機能に及ぼす影響を健常成人を対象に調査する基礎的研究を実施した。その結果、圧迫療法を行うことで起立時の収縮期血圧の低下や心拍数の増加が抑えられることに加えて、自律神経の反応も抑えられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
起立性低血圧に関連する生理学的機序に関しては、横断的な解析により、総末梢血管抵抗が重要な関連因子である可能性が示唆された。また、起立性低血圧の新たな評価手法の開発や治療介入に関する研究にも着手し研究成果を学術論文として発表できた点は、当初の計画以上に進展しているといえる。一方で、起立性低血圧に関連する生理学的機序の検討については、適格基準を満たす脳卒中患者の少なさ、COVID-19感染者による病棟閉鎖、計測機器の故障により、縦断的なデータ収集が遅れている。したがって、研究の進捗状況を総合的に判断した結果、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度:心拍出量や総末梢血管抵抗を含む血圧の規定因子となる血行動態変数を評価するための計測機器が故障し、現在は血行動態変数の評価ができない状況にある。この問題に対して、機器を修理に出していることに加えて、藤田医科大学と連携し新たに計測機器や研究環境を整備することで解決を図っている。計測機器故障の問題が解決するまでの間も、起立時の血圧変化と運動機能、体組成、自律神経機能、日常生活活動との関係を解析できるよう、データ収集を継続する。また、起立性低血圧の生理学的機序に関する横断的解析結果やSit-up試験を用いて地域在住高齢者での計測で得られた成果を学会演題や学術誌への論文として投稿する。 令和7年度:起立性低血圧に対する治療介入に関して、健常成人を対象に下半身への圧迫療法が起立時の血行動態に及ぼす影響を調べる基礎的検討を行う。起立時に血圧低下を示す血行動態は、心拍出量のみが低下する、総末梢血管抵抗のみが低下する、心拍出量と総末梢血管抵抗の両方が低下するの3つのタイプに分類できる。このような起立時の血行動態の違いによって、圧迫療法の効果が変化するかを解析する計画である。計画以上にデータ収集が進展すれば、脳卒中患者を対象とした臨床研究も実施する。
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