研究課題/領域番号 |
21K17493
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
及川 真人 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (80646109)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | 肺癌 / リハビリテーション / 理学療法 / 呼吸筋力 / 肺癌術後 / 呼吸筋トレーニング / 運動耐容能 / 健康関連QoL |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、肺がん手術後の全身持久力や生活の質の低下が、手術によって傷害される呼吸の筋力が影響していることを仮説とした研究である。この仮説を明らかにするために、まずは、手術後の呼吸の筋力と全身持久力、生活の質をそれぞれ測定し、その関連性を調査する。次いで、息を吸う際に抵抗が加わる器具を用いて、週に5回以上の頻度で呼吸の筋力をトレーニングすることで呼吸の筋力を強化し、これによって術後の全身の持久力や生活の質の回復が早くなるか効果を検証する。呼吸の筋力のトレーニングは、自宅でも簡便に実施可能なため、その有益性を示すことができれば、肺がん手術後患者の有効な治療および管理の手段となる。
|
研究実績の概要 |
肺癌手術は,全身麻酔や胸壁に対する手術侵襲を契機に,術後に有意な吸気筋力の機能障害が生じる可能性がある.本研究では,肺癌手術後患者の吸気筋力障害の発生状況を調査し,同患者群の特徴を明らかにするとともに,術後の運動耐容能との関連性を検討した。方法は,長崎大学病院呼吸器外科にて術前より理学療法が紹介された肺癌患者103例(年齢73.5歳,男性59例,Stage IA 68例,肺葉切除術 88例)を対象に,手術前日と術後1週の時点で吸気筋力[最大吸気口腔内圧(PI max)]と運動耐容能(6MWD)を評価した。術後PI maxが男性は60cmH2O,女性は40cmH2O未満を術後低吸気筋力群と定義し,対象者背景ほかの評価項目を両群間で比較検討した。結果は,術後のPI maxは,術前の値と比較して有意に低下し(63.5 vs. 50.3cmH2O, p<0.01),術後低吸気筋力群は58例(56%)であった。術後低吸気筋力群の患者背景は,術前の吸気筋力が低値であり(73.4 vs. 55.8cmH2O, p<0.01),年齢や性別,術式や切除肺容量には両群間で差を認めなかった。術後の6MWDについては,術後低吸気筋力群が非低下群よりも低値であった(458.4±77.0 vs. 427.3±87.0 m, p=0.06)。肺癌手術は,術後に吸気筋力の障害が生じやすく,吸気筋力の障害は術後の運動耐容能に関連する可能性が示された。本研究の結果は,これら患者群における術後の呼吸筋力評価の必要性を示すとともに,肺癌術後患者においても低吸気筋力群は運動耐容能が有意に低いことから,術後の呼吸筋トレーニングの適用対象となる可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
呼吸筋力の評価は,被検者が紙マスクを外した状態で強く吸気および呼気を行う検査である。そのため,新型コロナウィルス感染症の感染拡大時期には,評価の実施を控えるべきであることが示された。この検査特性と感染拡大の影響を受けて,研究の導入時点より呼吸筋力の評価自体が制限され,現在に至るまでその影響が続いているために研究の計画が遅延している。
|
今後の研究の推進方策 |
肺癌術後患者の術後呼吸筋障害については,これまでの調査によって概ね明らかにされた。そのため,次年度以降は,術後の呼吸筋障害が有意な患者群に対して,呼吸筋トレーニングを導入し,その効果検証を進めていく予定である。
|