研究課題/領域番号 |
21K17523
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 筑波大学 (2023) 川崎医療福祉大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
飯村 大智 筑波大学, 人間系, 助教 (40881842)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 吃音 / スティグマ / 尺度開発 / 臨床応用 / 認識 |
研究開始時の研究の概要 |
吃音(きつおん)は発話の非流暢性を示す流暢性の障害であり,成人吃音者の治療は心理面での対処と受容に重点が置かれる。申請者は成人吃音者のQOLは吃音の否定的認識の原因となるスティグマによって有意に説明されることを明らかにしており,吃音者が自身に抱くセルフスティグマの指標は重要な評価項目であると推察される。本研究では,英語で標準化されている吃音者のセルフスティグマ尺度の日本語化を行い,吃音者の心理特性の評価方法の開発を目指す。さらに,吃音の治療前後のスティグマの変化を評価し,本尺度の臨床応用の可能性を探るとともに,QOLを見据えた成人吃音者の評価バッテリーの開発を目指していく。
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研究実績の概要 |
成人吃音者が感じる吃音のスティグマの評価と支援に向けて研究を行っている。昨年度に開発した吃音のセルフスティグマ尺度(Self-Stigma of Stuttering Scale:4S)の日本語短縮版(4S-J-16)について,吃音臨床における有用性を評価するため,吃音に関連した既存の尺度との関係性について検討を行った。コミュニケーション態度,全般的な吃音のインパクト(悪影響),吃音の自己受容の標準化された尺度とセルフスティグマ尺度との関連性を探ると,吃音の自己受容のスコアが低いほどセルフスティグマが高いことが,また全般的な吃音のインパクトが大きいほどセルフスティグマは高くなることが分かった。これらは従来の吃音臨床のアウトカムとして用いられ,治療法の効果検証に用いられていることからも,吃音のセルフスティグマ尺度は吃音の臨床的側面について一定の構成概念妥当性を有していることが認められ,本尺度の臨床における有用性を間接的に確認することができた。あわせて,スティグマを生じさせる要因を調査していく中で,本人のセルフスティグマ形成には周囲からの否定的反応などの環境要因が働いていることが分かった。そこで環境要因について,どのような非吃音者が吃音当事者に対して否定的なステレオタイプを抱くのかについて,非吃音者を対象としたデータを分析した。吃音の原因を「生まれ備わっているもの」「遺伝的な要因」「脳の生物学的な変化」などの生得的要因に帰属する非吃音者は「外向的」「心地よさ・安全」「開放的」という因子分析から抽出された3側面について,有している否定的態度は小さいことが分かった。この知見は,セルフスティグマを生じさせうる環境的要因を明らかにする一助となったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は吃音の臨床介入研究のための情報収集及び,主要アウトカムやQOLとの関連の精査について,概ね当初予定のスケジュールで実施が行えた。あわせて,社会的なスティグマを生じさせる要因について,論文投稿を行い国際誌(Frontiers in Psychology)に採択され,成果発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,吃音臨床の訓練の前後において吃音のセルフスティグマ尺度によりスティグマの評価を行い,その得点を比較するとともに,それ以外の対象者の年齢や性別などのデモグラフィック変数などの個人要因や訓練の方法との関連性について検証を行う。それにより,本尺度の臨床的な有用性を明らかにするとともに,更なる研究の発展に向けた示唆を得ることとする。そのために,中高生から成人にかけての吃音の臨床研究について文献レビューの実施も検討しており,本尺度がこれまでの臨床で得られた知見や課題に対してどのように対処できるのかについても考察したいと考えている。あわせて,得られた研究成果について学会発表および論文投稿を行うことで,成果発表を進めていく。
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