研究課題/領域番号 |
21K17548
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
伊東 大輝 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (60881472)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | MRエラストグラフィ / 高速化 / 3次元解析 / MRIパルスシーケンス / 硬度 / 異方性 / 腱板筋群 / 再現性 / 画像処理 / 腱板断裂 / 肩 / 筋肉 / MRI / 自動測定 / 肩部 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「腱板断裂の予防的診断」を可能とする新しい画像診断技術を開発する。腱板断裂は不可逆的な損傷であり、腕を扱う多くのアスリートが悩まされている肩部損傷の一つである。腱板断裂を引き起こす要因の一つとして、肩部筋肉の硬度上昇が知られているが、これまでの形態画像(CTやMRI画像)では筋硬度を測定することはほとんど不可能であった。そこで本研究は、組織の硬さを画像化できる技術「MRエラストグラフィ」を腱板筋群に導入する。本研究によって開発する技術は、整形外科学やスポーツ医学にとって有効的な手段であり、腱板断裂を予防できる新たな技術に発展することが予測できる。
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研究実績の概要 |
MR エラストグラフィ(MRE)は、組織内の振動伝達を可視化し、MRIを利用して弾性率(硬さ)画像を生成する画像診断技術である。腱板筋群(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)において、棘上筋や肩甲下筋は触診による硬度評価が困難であるため、MREが「腱板筋群の硬度評価」に最適な方法論と考えている。 MREを扱う現臨床の撮像では、1方向の振動変位を解析する2次元のMRE技術が利用されている。しかし、生体内にて弾性波は3次元的に伝播するため、より正確な弾性率を得るためには、3次元の振動変位解析が必要である(3D MRE)。特に、腱板筋群を含めた骨格筋は、筋線維による異方性の性質を有するため、3D MREによる振動変位解析が重要となる。3次元(3方向)の振動変位を取得するためには、3回分のMRE撮像を繰り返し行わなければならない。この場合、体動などによる動きのリスクが大きくなるため、弾性率推定誤差が生じる可能性が高くなる。これに対し、本研究では3方向の振動変位を同時に取得し、通常の3倍速の時間で3D撮像を行う新たな手法を考案した(Magn Reson Imaging. 2024;108:138-145)。本手法を腱板筋群に適用することで、これまでの比較的単純な硬度評価だけでなく、筋線維異方性を考慮した筋本来の硬度を取得できる可能性がある。また、本手法による大幅な撮像時間の短縮により、高い正確性と高い再現性の両立が可能となる。今後、本手法を腱板筋群MREに適用し、腱板筋群MREに最適な撮像パラメータの検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MREは大きく分けて「撮像」と「画像解析」の2つのステップがある。腱板筋群MREは国際的に見てもこれまでに実施されていない新技術であるため、「撮像」と「画像解析」の両方の技術開発が必要である。昨年度までは「画像解析」を中心に行っていたが、本年度は「撮像」のステップを中心に研究を進めた。本年度の結果として、腱板筋群MREの正確性および再現性を向上させる新しいMRE撮像技術を開発した(Magn Reson Imaging. 2024;108:138-145)。「画像解析」においても、昨年度に開発した画像処理ツール(Magn Reson Med Sci. 2023. Online)を用いて、腱板筋群MREの最適な画像解析パラメータの検証を進めている。したがって、当初の研究計画での研究順序が少なからず入れ替わったものの、全体的な進歩状況は「おおむね順調に進展している」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
腱板筋群MREの正確性および再現性を高めるための振動パッドの開発および撮像条件の検証、画像処理技術の最適化を行う。棘上筋・棘下筋・小円筋に対しては、今後の臨床応用を見据えて、検査者間の再現性を高めるための振動パッドの形状調節や固定方法の改善を行う。肩甲下筋については、質の高い画像情報を得るために、振動パッドの形状開発や配置位置等の加振方法を改良する。また、改善・改良された撮像技術に対して、画像処理の最適化を行うことで、硬度推定の正確性を向上させる。上記検証が終わり次第、適切な条件をもってvolunteer studyを実施する。今後に続く調査の正確性を高めるためにも、まずは「20歳代・一般的な体型・男性」に対象者を限定し、平均的な腱板筋群の硬さを調査する。
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