研究課題
若手研究
本研究では身体の力学的な「動かしにくさ」:慣性という新たな観点から身体の適応に関する理解を深めることを目的に「専門トレーニングに適応したヒトは力学的な動かしやすさ(慣性の小ささ)を損なわないように発達している」という仮説を定量的に検証する。本研究の完成は障害リスクを下げながらパフォーマンスを高めるという身体能力を引き出すための理想的な身体に迫る知見が期待され、新たなトレーニング方略の視点を提示する。
身体運動を含む物体の運動は力学的作用と慣性の関係で決定する。これまで競技者の筋形態が調べられてきたが、これは力学的作用に対する適応の側面と言える。一方、力学的な動かしにくさである慣性に関しては十分に検討されていない。そこで、短距離競技者、砲丸投競技者、長距離競技者の慣性特性を調べた。筋であれ脂肪であれ下肢の質量の個人差は近位部に集中し、股関節まわりの脚の振りにくさである下肢慣性モーメントは質量ほど競技特性が表れなかった。つまり、質量変化の部位差がヒト全般で下肢の振りやすさを損なわないようことが明らかになった。一方、この特徴は下肢に限られ、上肢では遠位の筋もよく発達することが示された。
競技者の身体能力を研究する目的で行われる形態学的研究は主に筋サイズに着目してきた。これは力学的作用の一側面であるが、慣性もまた身体運動を決定する要因である。本研究は慣性という形態学的研究の新しい視点を示した。従来、スポーツ現場では身体を鍛えすぎると動かしにくくなると考えられてきた。これに対する筋を鍛える利点の説明としては、「筋が大きくなることで動かしにくくなる以上に大きな力を発揮できる」というものであることが多かった。本研究ではさらに、そもそも力学的な動かしにくさがそこまで大きくならないことを示すエビデンスを加え、筋量増大による動かしにくさ増大に強く注意を払う必要がないことを示唆している。
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