研究課題/領域番号 |
21K17638
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
濱本 明恵 岐阜大学, 工学部, 助教 (60784197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / エクソソーム / 摂食 / メラニン凝集ホルモン受容体 / 摂食行動 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞外に放出される微小膜小胞エクソソームにおいて一部のGタンパク質共役型受容体(GPCR)が発現・機能することが報告された。そこで摂食を制御するGPCRもエクソソームに発現・機能し、新たな摂食制御メカニズムとなると推測した。また短時間で簡便にエクソソームを検出可能なオリジナルの蛍光試薬を活用する。最終的にGPCR含有エクソソームを利用し、肥満を始めとしたGPCR関連疾患の新規治療法の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
最近、非常に注目を浴びている物質としてエクソソームが挙げられる。エクソソームとは細胞外へと放出される極めて小さい(50-150 nm)膜小胞である。エクソソームにはタンパク質、脂質、核酸など様々な物質が含まれており、放出されたエクソソームは異なる細胞に取り込まれることで細胞間の情報伝達を行う。先行研究において、エクソソームにGタンパク質共役型受容体(GPCR)が発現することが報告されたが、報告数は少なく発現のためのメカニズム等も不明であった。そこで、昨年度、エクソソームに発現するGPCRの探索を試みたところ、食欲や情動を制御するメラニン凝集ホルモン受容体(MCHR1)がエクソソームに存在することを見出した。今年度はその詳細な解析を行った。 まず、昨年度のエクソソームを細胞に添加する実験では送達されたMCHR1の発現および機能が非常に低かったため、改良するための条件検討を行った。その結果、共培養により比較的安定したMCHR1発現が観察され、リガンド添加時の細胞内シグナルも有意に上昇した。次に糖鎖付加がMCHR1のエクソソーム発現に重要なことが示唆されたことから、糖鎖付加抑制型変異体の安定発現細胞を作製したところエクソソームにおけるMCHR1発現が消失し、糖鎖付加が重要であることを示した。さらに、エクソソームに存在するMCHR1がどこ由来かを解析した結果、エクソソームに存在するMCHR1は生合成されたものが直接輸送されるのではなく、細胞膜上に発現したものが細胞内へインターナリゼーションした後にエクソソームに輸送されることも分かった。現在、変異体を用いた解析によりエクソソーム発現に重要なMCHR1領域を特定しつつある。本研究によりエクソソームを介したGPCR送達とそのメカニズムが明らかとなり、GPCR含有エクソソームを利用した新規治療システムの構築が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①エクソソームに含まれる摂食関連GPCRの同定:昨年度に引き続きエクソソームに発現するGPCRの探索を行った。GPCR安定発現細胞株を樹立して培地からエクソソームを精製し、GPCRの発現を解析した。その結果、ウエスタンブロット法および逆転写PCR法のいずれにおいてもエクソソームにおけるGPCR発現は新たに検出されなかった。現在、キンギョのMCHR1がエクソソームに発現するか解析中である。
②エクソソームにおける摂食関連GPCRの機能解析:MCHR1安定発現細胞とHEK293T細胞を共培養したところ、エクソソーム添加時よりも高い割合でMCHR1の発現が観察された。また、リガンドMCHを添加することで、細胞内カルシウム流入の下流であるNFATの活性が有意に亢進した。従って、エクソソームを介してMCHR1が異なる細胞に送達され、機能することが確認された。次に糖鎖付加部位をAlaに置換した置換体を用いてエクソソームを精製したところ、エクソソームにおけるMCHR1発現が消失し、糖鎖付加が重要であることが判明した。また、MCHR1のインターナリゼーションを阻害するβアレスチン2ドミナントネガティブをMCHR1安定発現細胞に強制発現させたところ、エクソソームにおける発現が消失し、細胞膜上に発現したMCHR1がインターナリゼーション後にエクソソームに輸送されることを見出した。また現在、C末端欠損変異体やキンギョMCHR1を用いた実験によりエクソソーム発現に重要なMCHR1領域を特定しつつある。
③マウス血漿中エクソソームにおける摂食関連GPCRの同定:マウスから血液を採取し、血漿を精製して血中エクソソームを回収した。逆転写PCR法を行ったところ、MCHR1のmRNA発現は認められなかった。今後は血液を濃縮してエクソソームの精製を行い、mRNAとタンパク質発現の解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きエクソソームに発現する摂食関連GPCRの探索を行い、エクソソームに存在するGPCRの共通点(配列、細胞内シグナル、結合タンパク質等)を調べる。 特にMCHR1に焦点を当て、MCHR1がエクソソームに発現する際のメカニズム(配列モチーフや相互作用因子)を解析する。In vivoにおいてMCHR1が発現するか解析し、MCHR1含有エクソソームをマウスに投与することで食欲やエネルギー代謝等に影響を与えるか調べる。 マウスから血液を採取し、血漿を精製して血中エクソソームを回収する。ウエスタンブロット法および逆転写PCR法を行うことで、同定した摂食関連GPCRがin vivoで実際にエクソソームに存在しているかどうかを解析する。摂食関連GPCRが存在するエクソソーム内にGPCRシグナルに関係する分子(Gタンパク質、βアレスチン、キナーゼ等)が共発現しているかを解析する。マウスに高脂肪食を投与した場合または絶食を行った場合、エクソソームに含まれる摂食関連GPCRの種類や発現量等に変化が生じるか測定する。 最終的に、GPCR含有エクソソームが治療方法として有効かどうか検討する。GPCRを強制発現した細胞の培地からエクソソームを回収してマウスの血中に投与し、どこに取り込まれるか等の体内動態を解析する。また摂食行動や体重変化、エネルギー代謝への影響を調べる。この時、目的とする組織にエクソソームが取り込まれるように、培養細胞の種類、膜表面の細胞接着分子を強制発現させるなど広く条件検討を行う。GPCRを含有するエクソソームを薬物輸送システムのように活用することで、リガンド側ではなく受容体側の発現機能を調節するというこれまでにない治療法となることが期待される。
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