研究課題
若手研究
敗血症は一度発症すると進行が早く、重症化や二次感染を引き起こしやすい。そのため、国内外において死亡率が非常に高い疾患である。本研究では、敗血症の効果的な予防的介入として、内因性イリシンレベル、そしてイリシン分泌の要となる運動およびプロバイオティクスに着目し、これらが、敗血症性炎症および免疫機能低下を保護し生存率低下を防ぐという仮説について検証する。
敗血症は感染症が起因となり発症する全身性炎症反応症候群(SIRS)であり、播種性血管内凝固症候群(DIC)から多臓器不全となり死に至る重篤な疾患である。敗血症は重症化を引き起こしやすく、国内だけに限らず国外においても死亡率が高い疾患であるが、未だに敗血症に対する効果的な治療法や予防法はないのが現状である。敗血症の罹患や重症化を避けるため、特異的治療法や予防的介入法の開発が望まれている。Irisinは運動トレーニングを行うことによって運動中や運動後に骨格筋細胞から分泌されてくる運動ホルモンであり、あらゆる疾患に対する機能や体の恒常性に関する効果が知られてきている。また、炎症性サイトカインの発現を制御するため、抗炎症作用や障害に対する保護効果も示されている。本研究の目的は、運動と栄養素の併用がIrisinレベルを上昇させることで敗血症の効果的な予防的介入として機能するか調べることである。2021年度に我々がまず行った研究では、内因性の循環Irisinレベルを著しく上昇させる運動プログラムを新たに立ち上げ、運動直後より分泌されたIrisinが少なくとも24時間は体内に循環し続けることを示した。これに続き2022年度の研究では、2021年度に確立させた運動プログラムを用いたトレーニングが敗血症モデルマウスにおける炎症病態の予防的効果として寄与するかどうか検証した。その結果、病理組織学的解析からはいくつかの臓器において炎症や浮腫などを抑制することが認められ、生存率においては上昇する傾向が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
2021年度の研究で新たに立ち上げた運動プログラムを用いて、2022年度では敗血症モデルマウスに対するIrisinレベルへの影響および運動トレーニングの予防的介入が敗血症性炎症の抑制効果や生存率への影響について示すことができた。したがって、今後の研究計画へ発展する成果を得ることができたと考える。
2022年度で示した研究成果をもとに、運動トレーニングと併せてIrisinレベルを上昇させる栄養素との併用による予防的介入が敗血症性病態にどのように寄与するか検証していく。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biomedicines
巻: 9 号: 2 ページ: 162-162
10.3390/biomedicines9020162