研究課題/領域番号 |
21K17765
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 泰樹 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (90779646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 聴覚モデル / 蝸牛 / 補聴技術 / 補聴 / 数値シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
補聴技術は、健聴者と難聴者で聴覚末梢系の応答パターンが等しくなるように補聴器の入出力特性を変化させる。これまでの補聴技術では知覚的側面から開発された知覚モデルが用いられてきた。しかし、知覚モデルでは説明困難な聴覚末梢系のダイナミクスが存在し、これが補聴技術の向上を妨げている。この問題を解決するために、本研究では、音の知覚を生み出す聴覚のメカニクスまで踏み込んだモデルを用いる。この研究を通じて、聴覚のメカニクスに基づいたモデルを用いて聴覚の機械的応答を制御し、音の知覚特性が操作可能であることを示す。そして、この技術を補聴へと応用する。
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研究実績の概要 |
聴覚モデルの応答パターンから音波を復元する手法を提案するに先立って、今年度は高齢者と若年者を対象とした単語音声の書き取り試験を基礎検討として行った。実験前にオージオメータで全ての参加者に対して聴力レベルを測定した。測定の結果、若年者は健聴であることを確認した。高齢者は、およそ半数が軽度難聴の傾向を示し、これは世界保健機構(WHO)が補聴器の装用を推奨する程度の難聴である。 実験は、音声信号に雑音を付加した刺激をパーソナルコンピュータから出力し、アンプを経由してヘッドフォンから両耳に提示された。実験参加者は、聞こえてきた単語音声を所定の用紙に書き取ることを繰り返す。実験終了後、正答率を求める。 信号対雑音比が低下するごとに、正答率は正解する。ここで、正答率が等しくなるように、高齢者群と若年者群に提示する信号対雑音比を予備実験の結果から決めて、本実験を行った。本実験の結果、等しい正答率を得ることができた。 正答率以外で聞き取りの困難さを可視化するために、書き取り時間に着目して解析を行った。その結果、高齢者群のほうが、等しい正答率であっても書き取りにかかる時間のばらつきが大きいことが分かった。これまでの音声の聞き取り実験では、記憶能力については考慮しないよう実験パラダイムが構築されてきた。しかし、聞き取り時間にばらつきがあることは、正答率と同時に測定可能な書き取り時間が聞き取りにくさの可能性を示した。 この実験では、補聴技術を検証するにあたっては、実際に難聴の当事者の協力が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの研究を通じて、補聴技術の開発には実際の当事者の参加が不可欠であることが分かった。しかし、その一方で数値シミュレーションの結果は、補聴器では、聴覚の応答特性を完全に復元することは困難であることが示唆されている。 高齢者を対象とした心理実験を通じて、応答パターンの中から復元すべき特徴の絞り込みを行う。そして、新たな補聴技術の創出を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者を対象とした心理実験を通じて、応答パターンの中から復元すべき特徴の絞り込みを行う。そして、新たな補聴技術の創出を目指す。
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