研究課題/領域番号 |
21K17827
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 (2022-2023) 立命館大学 (2021) |
研究代表者 |
黒田 大貴 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (20868731)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 構造的スパース / 正則化モデル / 最適化 / 信号処理 / 機械学習 / ブロックスパース / グラフ構造化スパース / 凸解析 |
研究開始時の研究の概要 |
情報通信工学やデータサイエンスの基幹を担う信号処理・機械学習の問題における多くの推定対象は,スパース性に加えて非ゼロ成分が構造的に分布する「構造的スパース性」を有する.しかしながら,その具体的構造は不明であることが障壁となり,構造的スパース性は十分に活用されてこなかった.本研究では,所望の未知情報に最適な構造を特定した上で構造的スパース性を活用する全く新しい推定手法を,凸最適化等の数理の知見を駆使して実現する.さらに,開発した手法を「フェーズドアレイレーダを用いた気象観測」等の理工学の実問題に対して適切に応用し,その有効性を実証する.
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研究実績の概要 |
前年度までに開発した最適な構造を用いて構造的スパース性を活用する方法の非自明な応用例として,確率過程のパワースペクトル密度を推定する問題に取り組んだ.パワースペクトル密度推定問題は,気象レーダを用いた気象観測等における重要な課題であるが,「確率過程の実現値(の周波数成分)は滑らかでないが,その平均に相当するパワースペクトル密度は滑らか」という難しい状況がしばしば生じるため,依然として未解決のままになっていた.研究計画当初では予想していなかった着想を得たことで,構造最適化のために導入した潜在変数の非自明な活用によってパワースペクトル密度をその滑らかさを活用して高精度に推定する方法を実現することができた.具体的には,複数の確率過程の実現値の混合値から各々の確率過程の実現値の周波数成分を推定する問題(フェーズドアレイ気象レーダ等で現れる形式)を想定し,ブロックスパース推定モデルを構築すると,構造最適化のために導入した潜在変数が各々の確率過程のパワースペクトル密度に相当することを示した.これにより,非負変数によってパワースペクトル密度が推定されるため,パワースペクトル密度の滑らかさを活用する機能を含めたモデル全体が凸最適化の原理により大域的最適化可能になっている.フェーズドアレイ気象レーダに対する数値実験では,提案法が従来のスパース推定モデルにスムージングの後処理を組み合わせた方法よりも優れた推定精度を達成することが示された.この成果を纏めた論文は分野横断型のオープンアクセス論文誌 IEEE Access に掲載され,その予備的検討結果は信号処理分野のトップカンファレンス(IEEE ICASSP 2023)でも発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画に基づき「具体的構造が未知であっても構造的スパース性を有効に活用できる方法」を実現したことに加え,当初計画を超える着想を得て「確率過程のパワースペクトル密度をその滑らかさを活用して高精度に推定する方法」を実現することにも成功した.これらの研究成果は信号処理分野のトップジャーナルやトップカンファレンスに採択されていることに加え,複数の情報系学会から招待を受けて講演を行なっており,特にブロックスパース性に関する成果をまとめた論文 (Kuroda and Kitahara, IEEE Transactions on Signal Processing, vol. 70, pp. 1506-1520, 2022) は第8回 IEEE Signal Processing Society Japan Young Author Best Paper Awardを受賞している.このように本研究課題の進捗状況は順調であり,その成果は国内外の研究者から非常に注目されている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,今年度までに開発した凸最適化により最適な構造を用いて構造的スパース性を活用する方法の推定精度をさらに向上させるために,全体凸性を保持した非凸強化に取り組む予定である.一般に非凸型正則化関数はスパース性をより正確に評価できるが,大域的最適化が困難になる欠点がある.近年,非凸型正則化関数を採用しつつ正則化モデル全体の凸性は保証するアプローチが注目を集めているが,具体的構造が未知の場合に構造的スパースな情報を推定する問題は想定できていない.すなわち,本研究で開発した「構造最適化の機能を含む凸型正則化関数」を全体凸性を保持して非凸強化することは非自明な課題となっている.凸解析の知見によりこの問題を解決する糸口を掴んでおり,実際に解決できれば本研究成果の価値がより一層高まるため,次年度は重点的にこの課題に取り組む.
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