研究課題/領域番号 |
21K17851
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
梶田 真司 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (40804191)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 転写 / 時間遅れ微分方程式 / パターン形成 / 数理モデル / 確率微分方程式 / 転写酵素 / 遺伝子発現 / ミトコンドリア / 軸索 / 反応拡散方程式 / ランダムウォークモデル / データ解析 / シミュレーション / 細胞分化 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞の分化状態は、多数遺伝子の発現量からなる発現量組成によって決定される。したがって細胞分化は、細胞が多様な発現量組成を獲得していくプロセスと捉えられる。単一遺伝子の発現は転写酵素がDNA上を移動しながらRNAを合成することで起こることが知られているが、近年の計測技術革新により、DNA上での多数の転写酵素の動態を定量的に測定することが可能になった。本研究では、これらの知見を取り入れ、転写酵素がDNA上を移動して遺伝子を発現させる過程を数理モデル化し、転写酵素のダイナミクスと細胞分化状態との関係性を数理的に解析するともに、転写酵素の局在データを用いて数理モデルの検証を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は遺伝子上の転写酵素の移動を考慮した遺伝子発現モデルの開発を前年度に引き続き進めた(関係する学会発表1件)。昨年度構築したモデルの研究に加えて、本年度は新たに3つのモデルの構築を行なった。1つ目は、転写酵素が遺伝子上を移動するのにかかる時間を考慮した時間遅れ微分方程式による遺伝子発現のモデルである。近年の転写研究で明らかになった細胞現象をモデルに組み込むことで、転写バースティングと力学系理論における分岐現象の関係性を示唆するシミュレーション結果が得られた。2つ目は、単一遺伝子上の転写酵素の移動を表すモデルである。実験系の共同研究者と共に、転写酵素の化学修飾の効果を解析するためのよりミクロスコピックなモデルの構築を進めている。3つ目として、細胞が環境に応じてどの遺伝子を発現させるべきかの意思決定を行う際に重要な、転写制御因子が認識する遺伝子配列の特異性に関するモデルの構築も行なった(関係する学会発表1件)。
さらに、本研究で取り組んだ数理的手法をより一般化させ、1次元空間を確率微分方程式に従ってランダムに動く粒子が、粒子間の直接的な相互作用はないにも関わらず、粒子が生成する濃度場を介して相互作用することで等間隔に粒子が並ぶという新たなパターン形成の数理モデルを構築した(関係する学会発表1件、論文投稿準備中)。1次元空間における複数粒子の協働現象という点で転写酵素ダイナミクスの数理モデルとは密接な関係があり、今後それらの関係性の調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新たに複数のモデルを構築した。具体的には分岐理論やパターン形成との関連など理論的な解析を重視したモデルに加え、実験系の共同研究者と遺伝学的・生化学的な理解の向上を目指したモデルの構築も行なった。これにより、理論と実験の両面で理解が進みつつある。また研究発表としては3件の学会発表を行い、うち1件は論文投稿準備中である。以上より、本年度の研究は概ね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した数理モデルの改良やより詳細な数値シミュレーションと理論解析を進めていく。またこれまでに構築したモデルは比較的少ない遺伝子数を扱ったモデルであることから、細胞分化を意識したモデルとして今後はより多数の遺伝子数を扱ったモデルへの拡張を検討していく。
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